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薬丸岳のミステリー小説5選

街クリ編集部 街クリ編集部


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5. 『ハードラック』
(2011年)徳間書店(文庫版は2015年、講談社)

第14回大藪晴彦賞候補となったハードボイルド作品。ハードラック(HL)とは、バッドラック(BL)よりさらに運の悪い奴で、首を括ってもう用なしとの意味で、闇の組織のリストにつけられた記号です。

母の再婚相手やその息子とそりが合わず、就職先も喧嘩や不景気で追い出された江原仁は、なけなしの貯金も騙し取られ、闇サイトで危ない仕事に手を染めざるを得なくなります。さらに闇サイトで仲間を募った仁は、軽井沢の資産家夫婦の家に強盗に入りましたが、頭を叩かれ昏倒しているうちに強盗殺人事件の容疑者にされてしまいます。

警察に自首して殺人犯にされてしまうことを恐れた仁は、闇サイトに集まった4人を見つけ出し、真犯人を暴くべく動き出します。仁は警察、闇の組織を駆使して真犯人を突き止めますが、真犯人は「闇の組織は振り込め詐欺、闇金、売春等に手を染め、運の悪い人間を騙し苦しめる。闇サイトに集まる人間も同様に悪に手を染め、生きる価値のないものだ」と言い放ち、仁を殺そうとします。最後の場面で、真犯人の苦悩が明かされますが、作品全体のテンポがよく、ハラハラしながら一気に読ませてしまうジェットコースター小説です。

まとめ

ここに紹介した薬丸ミステリーは、少年法、心神喪失者の責任無能力、犯罪被害者の加害者への赦し、罪への赦しと憎しみ、弱い者を苦しめる闇社会への怒りをテーマにし、その目線はいつも犯罪被害者とその家族、また時には加害者に寄り添ったものになっています。テーマだけを見ると、硬派な社会派ミステリー作家と思われるかもしれませんが、いずれの作品も主人公が内に葛藤を抱え、人間の弱さを素直にさらけ出しているため、彼らの内面にまで踏み込んで作品世界に浸ることができます。

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