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薬丸岳のミステリー小説5選

街クリ編集部 街クリ編集部


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4. 『刑事のまなざし』
(2011年)講談社

収録の短編作品『オムライス』が第60回日本推理作家協会賞(短編部門)の候補に選ばれた7作の短編連作集です。刑事・夏目信人シリーズとして、『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』(出版社はいずれも講談社)の計3作が刊行されており、うち『その鏡は嘘をつく』のみが長編です。2013年には連続テレビドラマ化もされました。

東池袋署刑事・夏目信人は、以前は少年鑑別所で罪を犯した少年の更生を助ける法務技官でした。しかし、10年前の連続通り魔事件で娘・絵美が植物状態になったことから、犯罪者を追う刑事という仕事を選んだのです。一見、刑事のように見えない温かいまなざしを持つ夏目。しかし、その深い洞察力により事件を解決してゆきます。

表題作『刑事のまなざし』で絵美が襲われた連続通り魔事件が解決するのですが、「家族を殺した憎い犯人は殺されて当然だ」と言う犯人に対し夏目は、絵美が目覚めた時に人を憎むことを肯定し殺してしまってもいいなどと伝えたくはない、と語ります。

また『オムライス』では、火事で内縁の夫が死んだ看護婦が、息子の放火と義理の父殺害の自首に驚き、自分の犯行を自白しますが、夏目は彼女が本当は誰を殺したかったのかを告白しないと償いはできないと、諭します。罪を赦す法務技官と罪を憎む刑事の2つの心を内に秘めた夏目の、ぼくにとって捜査はいつも苦しいものですよという言葉が、やるせなく心に残る作品です。

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