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逢坂剛のミステリー小説3選

街クリ編集部 街クリ編集部


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逢坂剛は、推理小説、冒険小説、時代小説と幅広い作品を刊行していますが、推理小説の一ジャンルとして警察小説を得意としています。ここに紹介する3シリーズは、それぞれ全く毛色の変わった警察小説で、その多様性に逢坂剛の作家としての技量の高さがうかがえます。同じ作家が書いた、多彩な警察官を楽しんで読み比べてみてください。いずれにも異なった味わいがあります。

1. 『裏切りの日日』
(1981年)講談社(文庫版は1986年、集英社)

テレビドラマ・映画化された百舌もしくは公安警察シリーズの序章となる作品。以下『百舌の叫ぶ夜』(出版社はいずれも集英社)『幻の翼』『砕かれた鍵』『よみがえる百舌』『鵟の巣』『墓標なき街』の計7作が刊行されています。しかし本作には、シリーズの主要人物である刺客の百舌、警視庁公安部の倉木尚武、明星美希、刑事一課の大杉良太等は登場しません。唯一、警察庁特別監察官・津城俊輔警視のみが顔を出します。

ここに登場するのは、同じく警視庁公安部係長である桂田渉警部補で、同日に同一管内で起こった商社ビル立てこもり事件と右翼の大物の狙撃事件を捜査していきます。桂田は、公安の中でも強引な捜査等により孤立しているものの、コンビを組む部下の浅野からは優秀な公安捜査員に映ります。2つの事件が起こった時、桂田と浅野はたまたま商社に居合わせて捜査に加わりますが、犯人は人質を解放し、身代金も残したまま商社ビルから忽然と姿を消します。これに並行して特別監察官・津城から桂田の身辺を調査することを依頼された浅野は、桂田が右翼の大物から金を受け取っていたこと、その大物の愛人を尋問したことなどをつかみ、桂田に不信を抱きます。立てこもり事件では、津城が浅野に漏らした犯人の特定が可能な体臭についての情報に桂田が動き出し、事件は終結を迎えます。立てこもり事件を陽動作戦として右翼の大物を狙撃した背景には、警察幹部の思惑や、政治家に絡んだ汚職事件等が垣間見えますが、最後には桂田ひとりが悪徳警官の汚名を着せられ、葬り去られます。

全てが隠蔽された後に、浅野が桂田に感じる改悛の思いが、唯一の救いになるハードボイルド小説です。続く『百舌の叫ぶ夜』からは、倉木、明星、大杉等が登場し、刺客・百舌も顔を出します。倉木は、本作の桂田のように悪徳刑事ではありませんが、家族に屈託があり、冷静かつ強引な捜査をする点が共通しており、全作のハードボイルド感を支えています。読み始めたら、全作通読間違いありません。

 

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