最近の技術の進歩はすごく、胃カメラは麻酔があったり、鼻からカメラを通したりするなどで、だいぶ苦痛ではなくなった。しかし、その当時は局部だけ感覚をなくす程度の処置しかなかった。腸の内視鏡も、肛門の周辺にスプレーのような麻酔をしただけだった。
そしてゴムホースみたいに太いスコープを挿入していく。「痛い?」と医師が聞くので、プロレスの絞め技をされているがごとく、「痛い!」とベッドやらなにやらを叩きまくった。でも「ちょっとがまんね、よッ」と掛け声とともに太いスコープを押し込んでくる。痛いところはどうも曲がり角をカメラが通過するときのようだった。かつて経験がないほど下腹が大きく膨れあがり、苦しいのなんの。「よし、到着、じゃあとは写真を撮るだけだから」と、カメラがようやく抜き取られる段階になり、その後はすぐ検査は終了したのである。
そこまで苦労したのだから何らかの病変が見つからないと、自分としては納得できない思いだった。しかし医師の口から出た言葉は、「異常ありませんね。キレイなもんですよ」の一言だった。それでさらに一年以上も下痢状態を我慢した。ようやく判明した病名が『過敏性腸症候群』、つまり精神的な病気だったわけだ。