7. 『アヒルと鴨のコインロッカー』
伊坂幸太郎(2006年)東京創元社
伊坂幸太郎の代表作と言っても過言ではない作品。大学生である椎名の現在の物語と、琴美という女性の2年前の物語が、交互に描かれていきます。大学生の椎名は、引越し先のアパートの隣人から「本屋で広辞苑を盗まないか」と持ちかけられ、手伝うことになります。その計画後、椎名は2年前にいた琴美と言う女性の話を聞かされ、そこから衝撃の展開を引き起こしていきます。序盤では全く共通点のなかった登場人物達が徐々に繋がっていく伏線の引き方は、見事と言う他ありません。
8. 『重力ピエロ』
伊坂幸太郎(2006年)新潮社
もう1つ、伊坂幸太郎の作品を紹介します。主人公は辛い記憶を抱えるの兄弟。仙台で起こった連続放火事件。放火現場の近くには、必ず奇妙なグラフィティアートが描かれています。過去にトラウマを抱える兄弟である泉水と春は、事件に興味を持ち、謎解きに乗り出します。グラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンクが鍵になり、話が進んでいきます。この物語は兄弟の繋がりについて深く考えさせられる作品です。自分の存在をなんとか留めようとする弟の健気さは悲しくもあり、どこかもどかしさをも感じます。爽快感があり、一気に読めてしまう作品です。