2010年代は創作物、ドキュメンタリーに関わらず本当にさまざまな良作がありまして、個人的にもここらで一度まとめてみようと思い立ち、このコラムを書いています。
ちなみに2010年代はゾンビ映画も「ウォーキングデッド」の煽りを受けたのかはさておき、非常に豊富なので、これもまとめておきたいのですが、それはまた別の機会に。
さて、後に2010年代は音楽映画の時代と呼ばれるかもしれないほどに、良作揃いのここ数年、ちょっと数が多いので、ベスト5としてしまうと選ぶのに悩んでいるうちに2010年代を終えてしまいそうです。ので、いくつかルールを決めてみました。
- ベスト5とタイトルが付いているが、1位〜5位との間は精神状態により順不同とする
(そうでもしないといつまでたっても順位が決められないため) - ミュージシャンを追ったドキュメンタリーであること、架空のミュージシャンやバンドがメインで登場していること
(サントラが良い映画(たとえば「バードマン」)を入れると数が多すぎるため) - 同じ監督は1作品まで
(ジョン・カーニー作品がワンツーフィニッシュを決めてしまうため) - 家から一歩も出ずに鑑賞することが可能
(手軽に鑑賞できることを重視するため。今回出て来る作品は、すべてHulu、Netflix、iTunesストアのどこかで2017年4月21日現在視聴可能)
以上です。さっそく5位から紹介します。
第5位 シュガーマン 奇跡に愛された男(Searching for Sugar Man)/2012年
1970年代にアメリカでデビューしたものの、鳴かず飛ばずで音楽界と人々の記憶から消え去ったシンガーソングライター、シクスト・ロドリゲスを追ったドキュメンタリー作品です。
Reference:YouTube
なぜ、まったく売れなかったミュージシャンを題材にしたかというと、この方のレコード『Cold Fact』がなぜか南アフリカ共和国でカセットテープにダビングされて広まったことから、海賊版レコードがバカ売れするんです。
「彼はその後自殺した」という噂が南アフリカでは広く信じられていました。しかし、1990年代になり、ファンがネットを駆使してエビデンスを取ろうとしたところ、なんと彼が生きていることを知ることになります。デトロイトで肉体労働者として働いていた彼を探し出し、数十年の時を経てアフリカ公演を果たすまでが、まるで謎解き映画かのように進行していきます。
ロドリゲスは音楽界を去ってから何をしていたのか? アフリカで何十万枚も売れたレコードの印税は誰が懐に入れたのか? なぜ、そこまで遠い異国の地でヒットするに至ったのかなどなど、ひとつひとつの謎を丁寧に紐解き、ドキュメンタリーながら滅法面白いエンターテイメントとしての要素も満たしている佳作です。
“デビューはしたものの、そこまでは売れなかった”ミュージシャンの映画としては、2013年「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(Inside Llewyn Davis)」
も、今回は選んでいませんが素晴らしい猫映画でしたね。
“事実は小説より奇なり”と昔から言いますが、このドキュメンタリー「シュガーマン 奇跡に愛された男」で明かされる真実は、まさに「ノンフィクションはフィクションより奇なり」です。