9. 『銃』
中村文則(2002年)河出文庫
上記に続き、中村文則のデビュー作をご紹介します。ある日、突然拳銃を手に入れた主人公は、その拳銃で自分の人生に新しい価値観を見出そうとします。徐々に狂喜が増す銃の存在に、主人公の混乱する心理描写が丁寧に描かれています。理性のたがが外れ、自分の潜在意識の中にあった「悪」に侵食していくその様は、読み手に底知れぬ恐ろしさを感じさせます。本来の「人間」について深く考えさせられる、不思議で奇妙な読後感が味わえる作品です。
10. 『桐島、部活やめるってよ』
朝井リョウ(2010年)集英社
タイトルにある「桐島」が作中、一度も直接登場することはないという斬新な手法で描かれたことで話題を呼んだ作品です。物語は、タイトルンの通り「桐島」が部活をやめるということに影響を受ける生徒達を中心に描かれています。高校生は、同じような価値観をもった友達で集まるような閉鎖的な世界を大切にします。そして彼らが過ごす青春には、大なり小なり問題や葛藤が付き物。大人から見ればどれもこれもテンプレのようで、ありきたりのように感じますが、それでも彼らにとって大切な問題で受け流すことはできない・・・。そんな若者の内側をリアルに的確に表現したような作品です。
まとめ
20代ということもあり、デビュー作となるものも複数ありましたね。20代の勢いの強さなどが感じ取れるものも多い気がします。好きな作家さんを見つけて、若かりし頃の作品と最新作との作風の違いを探してみるというのも新しい読書の楽しみ方ではないでしょうか。