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唯一無二の浮遊感を醸し出す偉大なるバンド「フィッシュマンズ」についてお願いだから語らせてください

加藤広大 加藤広大


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「からっぽ」の言葉から包み込まれる世界

フィッシュマンズの凄い特徴のひとつとしては、どんな季節でも、どんな天気でも、どんな気分でも聴くことができる稀有な音楽であるということが挙げられます。元カノを思い出しながら聴く『いかれたBaby』、窓を全開にして、部屋を掃除しながら聴く『MELODY』、雨の日に聴く『Weather Report』、夜の街を歩きながら聴く『Walking In The Rhythm』・・・。本当にいろんなシチュエーションで聴きました。そして、その体験はどれも素晴らしいものでした。

そう、フィッシュマンズの音楽は、どんな状況においても景色に色付けをすることなく、透明で空気のように漂っているのです。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/03/air.jpg空気、それは必要なもののイラスト(出典:いらすとや

佐藤伸治の紡ぐ言葉は、いつだって「からっぽ」です。そのからっぽに、単語というよりは、1文字1文字が詰め込まれ、意味をなし、気化して大気中に散らばり、周囲を包み込みます。それは耳で聴くというよりは、なんだか頭の上の方から聴こえてくるような不思議な体験です。その言葉と音楽は、天使の囁きとか言うとなんだかクサいですが、まるで何かの助言のようです。

その、どこからともなく聴こえてくるような声は人を心地よくしたり、時には怖い思いをさせたり、様々な気持ちを呼び起こします。さらに、よく歌詞を追っていなくても時折、耳に飛び込んでくる単語は、いろんなことをハッと気付かせてくれます。

友達もいなくなって
引用:『Baby Blue』

運命に出会い運命に笑う
引用:『すばらしくて NICE CHOICE』

飽き飽きする前に 帰ろうね
引用『Just Thing』

中でも、私が好きなのは『気分』という曲の中の

勇気のカケラも見せずに 死ぬのは誰ですか

大きな声も出さずに 死ぬのは誰ですか
引用:『気分』

という一節です。

実は、ライターになろうとしたきっかけのひとつがこの一節でした。私は音楽や映画、麻雀競馬オカルトから文学などなど、いろんなものを調べたり見聞するのが大好きで、文章を書くのもこれまた好きだったのですが、その実誰かに何かを紹介したり、プレゼンするのが苦手で苦手で仕方ありませんでした。今も苦手ですけど。

でも、「せっかくいろんなことが好きなのだから、生きている間に誰か1人でも、自分が紹介したものをきっかけにして、それを好きになって楽しくなって、いつか飲み屋で誰かに話して欲しいな。だから、まずは小声から出してみよう」と恐れ多くも思ってしまったわけです。

「音楽の力は偉大だ」とよく言いますが、実際フィッシュマンズには、出不精で面倒くさがり屋な1人の人間にそれをさせる力があったのです。

街角のクリエイティブ ロゴ


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