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音楽バーで曲をリクエストするときに注意したい5つのポイント

加藤広大 加藤広大


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今年は雑誌の特集などで、「アナログブームが再燃」といったような見出しが踊り、たびたび音楽バーやジャズ喫茶などがクローズアップされていました。

このような、いわゆる音楽を“かける”バーにおいては、家では聴けない大きい音量で自分の好きな曲を聴いてみたくなるものです。

そんな時にするのが、アーティストや曲の「リクエスト」ですが、どうやってリクエストしたらよいのか分からない方も多いと思いますし、時たま、空気が読めずに野暮なリクエストをしてしまっている酔っぱらいを見かけることもあります。つい先日も見かけたのですが、トイレに行って鏡を見たところ、その酔っぱらいは自分でした。

そんなわけで、お酒の量が増える師走でもありますし、今回はカウンターの中も外も経験した身として、そしてバーテンダーから複数聴取したお話を総合つつ、バーで音楽をリクエストする時のポイントや、ちょっとした作法をご紹介します。

作法と言っても何もおカタいものではありませんし、そもそもバーなんて大人の保育園、託おっさん所みたいなものです。しかしながら、バーは非常にパブリックなスペースでもあります。ですから、「店の人もお客さんも、皆楽しく飲める空間作りに役立つといいなあ」と考えながらこれを書いています。

早速説明していきたいのですが、結論から言うと、以下のようなことを頭に入れておけば問題ありません。

音楽のことなんて知らなくても大丈夫

まず前置きとして『音楽バーは音楽を知らないと入店してはいけない』なんてことはありません。若き音楽初心者に、薀蓄を垂れたくて仕方のないおっさん連中がカウンターで安酒を飲みながら待ち構えている、ということもありません。嘘です。たまに居ます。

とにかく、蕎麦のジャンルや歴史が分からないから蕎麦屋の暖簾をくぐってはいけないという理屈はありませんし、そんなことを言ったら病院は医者しか通えなくなってしまいます。

実際問題、バーの店内を見渡してみても、15人入れる店舗ならば本当に音楽が好きで、それ目当てに来ている人なんて1人か2人です。ですから、音楽のことは何も知らなくても大丈夫。むしろ、知らない方が先入観がない分、大いに楽しめるでしょう。ときどき、先入観がありすぎて大声で自分の意見を咆哮している方もいらっしゃいますが、どうか生暖かく見守ってあげてください。

リクエストはコミュニケーション

カウンターに置かれた紙に、リクエストしたいアーティスト名や曲名を書いて店員に提出するスタイルのバーでない限りは、おおよそ音楽をかけている人にリクエストをするのが通常です。良くバーで見聞きするのは以下のような質問です。

「このお店はリクエストできますか?」

大変丁寧でよろしい。しかし、これは優等生がする質問です。

ちなみに、割とデカい声と態度で後ろにひっくり返りそうになりながら

「兄ちゃん! あれある? あれ!」

などと尋ねる酔客がいらっしゃいますが、あれは基本的にありませんし、これは0点ご退店の質問です。

人が人に何かをリクエストする以上、そこにはコミュニケーションが発生します。ただ単純に“聴きたい曲がある”というのを伝えるのではなく、

「このお店はどんなジャンルの曲を流すんですか?」

「今かかっている曲は誰ですか?」

という風に話のとっかかりを作ることで、コミュニケーションを始めるのが良いでしょう。きっとお店のことや流れている曲を説明してくれるはずです。

こうして、少し会話をしたあとで

「自分はふだん、こんな曲を聴くんですよね」

と自分の好きな曲を伝えれば、店側もその音楽をかけやすくなりますし、もしかしたらそれに近い曲を教えてくれることもあるでしょう。知らなかった音楽を知れるのも、また音楽バーの醍醐味です。

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店の雰囲気を考える

「なんでおれがそんなことを気にしなきゃいけないんだ。やはり面倒くさい場所ではないか、音楽バーは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、店の雰囲気を感じ取ることは、とても重要です。昭和歌謡専門のバーでマーラーをリクエストするのは違いますし、クラシック喫茶でレッド・ツェッペリンをリクエストするのもまた何かが違います。ある意味間違ってはいないかもしれませんが。

たとえば、自分以外にはカップルだらけなのに総尺20分強もある難解な音楽をリクエストしては、断られてしまうかもしれませんし、よしんば曲が流されても非常に気不味い雰囲気が店内を包み込みます。

また、大変繁盛している時間帯の場合は音楽をセレクトしている店員のウデの見せ所ですから、リクエストは控えた方がよいでしょう。

ちなみに、その店内で流れている音楽のジャンルに明るくない場合は、

「あんまり知らないんですけど、何かオススメありますか?」

と尋ねてみるのも立派なリクエストです。

何曲もリクエストしない

1曲かけてもらうとつい嬉しくなってしまい、連続でリクエストしたくなる気持ちも分からなくもないですが、店は自分だけの貸し切りではありません。他のお客さんの迷惑にならないよう、リクエストは一発でキメるようにしましょう。

もちろん、リクエストを積極的に受け入れているバーでも同様です。たとえば、カラオケのマイクを離さずにずっと歌っている人が存在しますが、それと同じ現象が音楽バーでも起こっていると想像していただくと、周囲からどれほど冷ややかな目で見られているかを理解していただけるかと思います。

ちなみに、1曲かかるごとに

「ああー! これもいいけどあれの方がいいんだよなぁー! かぁー! こっちかぁー!」

と反応し続ける方がいらっしゃいますが、これもやめましょう。アイスピックで聖痕を刻みたくなります。

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リクエストした曲が無くても不機嫌にならない

リクエストした曲が無かった場合。これはもう仕方ないのですが

「音楽バーのくせに◯◯も置いてねぇのかよ!」

と憤慨する方も居ます。実際わたしは某音楽バーにて

「音楽バーのくせに外道も置いてねぇのかよ!」

と憤慨するおっさんを目撃したことがあります。外道は素晴らしいバンドですが、置いてある方が珍しいでしょうし、費用対効果を考えると他に置くべきレコードは山のようにあります。

音楽バーが所有するレコードは2,000〜3,000枚もあれば多い方でしょうし、そもそもレコードは場所を取ります。滅茶苦茶取ります。店側も有限のスペースに何のレコードを入れておくかには頭を悩ませていますから、リクエストした曲が無かったからと言って憤慨するのはやめておきましょう。

応えてくれたらしっかり聴く

これはバーテンダーの間でもよく“リクエストあるある”で議題にあがるのですが、リクエストしたにも関わらず、いざその曲が流れてふとそのお客さんを見ると、びっくりするほどまったく聴いていないという怪奇現象が起こることがあります。

音楽バーというと適当に音楽をかけているイメージがあるかも知れませんが、曜日や時間、客の入り方や客層(年代)、一見さん、常連さんの有無などなど……。その時にあった“選曲”をしっかりしているバーも少なくありません。

せっかくその流れにそって上手い具合に曲調を変え、満を持してリクエスト曲をスピンし

「どうだ! いいでしょお客さん!」

と、リクエストした当人の方へ目をやったところ、連れて来ていた女性を口説くのに夢中で曲をまったく聴いていなかったという哀しみゆえ、リクエストを憎み始め、暗黒面に堕ちていくバーテンダーも少なくありません。

何も手を叩いて喜べと言っているわけではなく、ターンテーブルがある方向に顔を向けたり、少しだけ背筋を伸ばして座り直したりするだけでも「聴いてますよ」の合図として、しっかりと伝わるものなのです。

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楽しいお酒はコミュニケーションから生まれる。かもしれない。

最後に、これは別に若者、年長者限らずなのですが、近頃はバーでお酒を飲んでいても、ずうっとスマートフォンを弄っていたり、曲を知りたい時には、目の前にいる店員に尋ねずに、Shazamの青い画面を光らせている人がとても多くなっていると感じます。

これが“悪い”ことだとは言いませんが、バーの店員やバーテンダーだって人間です。お酒にしても、音楽にしても、実は

「これ、なんですか?」

と話し掛けてもらえるだけで、意外と嬉しいものです。もちろん静かに一人で飲みたい時は、注文時以外は喋らなくてもまったく問題ありませんが、せっかくバーに遊びに来たのなら是非、コミュニケーションを取ってみてください。

そうして楽しい時間を過ごせたならば、そのバーはきっとあなたの“居場所”になるはずです。

以上、ざっと音楽バーでリクエストするときの作法、ポイントをご紹介しました。これから初めてて行く人も、いつも飲んでる常連さんも、年末で酒量が増えるこの時期ですから人様に迷惑をかけないように、素晴らしい音楽を聴きながら楽しくお酒を飲みたいものですね。

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