ブギウギピアノの名手、斎藤圭土が登場
さて、1番手の登場です。『デイジーワールドの集い』は、ホストである細野晴臣がゲストを呼び、演奏してもらったり一緒に演奏をするという趣向になっています。
まずはゲストの1人目、斎藤圭土がブギウギナンバーで場を暖めます。ブギウギとは、20世紀初頭に始まったピアノの演奏スタイルのひとつで、ブルースやロックン・ロールなどで用いられています。全く馴染みのない方でも、曲を聴けば「ああ、こういう感じね」と、すぐに感覚を掴めるほど現代の音楽にまで浸透しています。どこか懐かしい、つい身体が動いてしまう、ノリのよい音楽です。
斎藤圭土の口から呪文のように飛び出す、アルバート・アモンズやミード・ルクス・ルイス、ピート・ジョンソンなどの往年のブギウギミュージシャンの名前は、今や多くの人は存在すら知りません。しかし、彼等の曲をカヴァーする斎藤圭土の文字通り“弾む”指先から弾き出される演奏は全く古臭くないのです。
何より嬉しかったのは、1曲目が始まった時に待ってましたとばかりにどこからともなく始まった観客の手拍子が、とんでもなく上手だったことです。その空気感たるや、まさに現代のハウスレントパーティーか、はたまたジュークジョイントか。幸せなグルーヴを讃えた時間はあっという間に過ぎ、最後はオリジナル曲を即興で。2015年の12月17日にしか聴けない、そして人類の中で200人ばかりしか体験できない、その時だけの音楽を堪能させていただきました。