出典:IMDb
「デトロイト」は、1967年7月23日から27日にかけて米国デトロイトで起こった暴動と、そのさなかで起こった「アルジェ・モーテル事件」を描いた作品である。
実録モノであるが、事の発端や事件の詳細を知っている必要はない。オープニングでざっくりと全容が説明される。
このアニメーションと記録映像を駆使して、まるでドキュメンタリー映画がはじまるかのような手触りで解説される丁寧な導入と、自然な形で本編へ切り替える手法は物語のリアリティを補完し、単なる説明以上の効果を生んでいる。
初っ端から「やっぱりこういうの、お上手ですなあ」と思わず唸ってしまう本作の監督はキャスリン・ビグロー。
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「ゼロ・ダーク・サーティー」や「ハート・ロッカー」で見せた人間の「いやーん」な部分を凌遅刑のように剥き出しにしていく手腕はさすがで、もしや実体験があるのではないだろうか、あるいはそんな欲望があるのではと感じてしまうほどに、人間が、同じ人間を肉体的、精神的に追い詰めていく様を、今回も見事に描き出している。
今やいろんな意味で人間味あふれる尋問・拷問シーンをやらせたらトップクラスの監督であるが、本作も40分にも及ぶ尋問&暴行シーンを、絶妙なテンションでたっぷりと見せてくれる。
しかし、最も圧巻なのは、暴動に至るまでの冒頭シーンである
だが、最も圧巻であるのは冒頭で、民衆たちが暴動へ至るまでのシークエンスである。
街にある無許可営業の酒場では、黒人のベトナム帰還兵を祝うパーティーが行われていた。ここへ警察が押し入るシーンから物語は動き始める。
警官たちは客たちに対して激しく詰問する。あまりに理不尽で横暴な取締に、普段から警官たちに不満を持っていた近隣住民の不満は発火寸前となり、小競り合いが起きはじめる。
路地に溢れた民衆は、今にも飛びかかりそうな者、怯えている者、ニヤニヤと成り行きを窺っている者など様々だが、ひとり、またひとりと恐怖と暴力に感染していく。最初はからかっていただけの奴等も、やがてマジな顔になり、警官たちににじり寄っていく。
そして、ついに暴動へと至るのだが、発火点に達するまでの過程と、その瞬間の描き方が非常にリアルで、一刻も早く逃げ出したくなるような空気は客席にまで充満する。
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