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「デトロイト」恐怖の悪眉毛による地獄の40分間一本勝負

加藤広大 加藤広大


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「アルジェ・モーテル事件」と板挟みジョン・ボイエガ

「アルジェ・モーテル事件」は、暴動発生後の7月25日から26日にかけて、デトロイト市内のアルジェ・モーテルにスナイパーとそのグループがいるとの報告を受けて突入したデトロイト市警、ミシガン州警察、ミシガン州陸軍により、無実の民間人への尋問、殺人が行われた事件である。

ここで、今回のメインキャストがようやく全員顔を合わせることとなる。男性7人女性2人からなる9人の被害者サイドと警官・陸軍州兵からなる4人の加害者サイドに別れ、凄惨な事件が展開していく。

そして、13人の他にもう一人、白人と黒人の間を何とか取り持とうとするのが近隣にある食料品店の警備員、ディスミュークス(ジョン・ボイエガ)である。ジョン・ボイエガは今や「出ているだけで映画が安定する」ほどの力量を感じさせ、まるで物語を支える一本の巨大な柱のようですらある。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BMzQyMTMzNjc5M15BMl5BanBnXkFtZTgwMzQ4MjAwMjI@._V1_SX1500_CR0,0,1500,999_AL_.jpg出典:IMDb

「スター・ウォーズ」シリーズではファースト・オーダーからレジスタンスへと転身し、あの悪名高き「ザ・サークル」では世界的SNSの開発者として創業者と揉めまくり、本作では白人と黒人の間で気を揉みまくるという、毎度の板挟みっぷりであるが、今回はそのどれよりもスキルフルな演技で作品を強烈に律する。

「なんとかね、ここはひとつ穏便にね」と奔走するディスミュークスを尻目に、極悪非道っぷりを発揮するのがウィル・ポールター演じる白人警官クラウスで、この作品に出たせいで街を歩いていたら刺されるんじゃねえかと思うほどに、もうとんでもなくヤバい。

黒人を後ろから撃つのは当たり前、武器を持って無かったら自分のナイフをそっと死体の横に置いて証拠を捏造するのも当たり前、何より本人には全く悪気が無い。権力を持ったバカは質が悪いという見本である。誰とは言わない。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BZTJlMzYyODctODMxZi00MWFiLWI0MGYtYWNhMTc4YzdkOTk0XkEyXkFqcGdeQXVyMjgyOTI1ODY@._V1_SY1000_CR0,0,1496,1000_AL_.jpg出典:IMDb

ウィル・ポールターは役作りをするにあたって、2~3人の人物を合成させているが、合成された結果アメリカそのもののような人格になってしまったのは非常に興味深い。まさに一人米国である。

かくして合成された一人米国は強烈な人種差別主義者、サディストっぷりを発揮するが、実は最も凶悪なのが眉毛で、まるで悪魔の角である。途中から眉毛が気になって気になって、「もしかしたらこの眉毛がクラウスを操作しているのでは」と思ってしまった程である。

というわけで、本作における「演技凄かったで賞」のツートップはジョン・ボイエガとウィル・ポールターだが、他の役者も同率みたいなもんで、全員がハイスキルで尋問シーンをこなす。

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