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雨の日に読みたい。おすすめの恋愛小説10選

岡田麻沙 岡田麻沙


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9.『鍵』谷崎潤一郎(1973)中央公論社

圧倒的な筆力によって文学好きの人々から神様のように崇められている作家・谷崎潤一郎の、元祖寝取られ小説。

初版は1956年だが、この小説が未だ新鮮なエロスを呼び起こすことに驚かされる。お互いの日記を盗み読みしながら、「決して読んでいない、読むはずがない」と主張し続ける夫婦のねちっこいやりとりが笑いを誘う。「書かれていることが真実とは限らない」ことの気持ち悪さを最大限に引き立てる形で事態をもつれさせ、物語を紡いでゆくのは谷崎潤一郎の十八番である。『鍵』の中で夫婦は、真実を隠したり、盗み見たりしようともがく。そして肉体もまた、同様の憂き目に合う。夫は、妻の肉体を他の男に隠したり、盗み見せたりしてもがき、遊ぶ。恋は政治だ、谷崎潤一郎は筋金入りだ、ということが良く分かる作品だ。

 

10.『阿修羅ガール』舞城王太郎(2005)新潮社

覆面作家・舞城王太郎による三島由紀夫賞受賞作。覆面作家なので、三島賞の授賞式では史上初の欠席をして話題を集めた。砕けた文体でスピーディーに展開していく作風には多くのファンがいる。『阿修羅ガール』もやっぱり、冒頭からぶっとばしている。

減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。
引用:『阿修羅ガール』舞城王太郎(2005)新潮社、p.9

主人公、いきなり大変そうである。大丈夫かな、と思いながら読んでいると、彼女は風呂で自問自答を始める。そして、「少なくともまだ、私はアイムプリティファッキンファーフロムOKって感じではないから、OK」という、極めてハードルの低い自己肯定をする。ここまで低い自己肯定は自己否定と同義ではないか。そんな主人公の繰り広げる、切ない片思いの話・・・を追っていたはずが、気が付いたらバラバラ殺人事件の話になっており、さらに読み進めるといつの間にか舞台は現実世界から離陸している。ボーダレスで饒舌な舞城節が、イタめの恋愛を軽々と扱う様に、ハラハラしてほしい一冊だ。

 

以上、多少の変化球もまじえつつ、おすすめの恋愛小説をご紹介した。フロイトの顔写真を画像検索したり、公園でタイプの木を探したり、来るべき夏に向けていい恋をするためにできることは沢山ありそうだ。ぜひ気になったものを手に取ってみて、素敵な夏を過ごして欲しい。

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