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雨の日に読みたい。おすすめの恋愛小説10選

岡田麻沙 岡田麻沙


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7.『変愛小説集』岸本佐知子編訳(2014)講談社

海外の先鋭的な小説作品を手掛ける翻訳家・岸本佐知子が翻訳・編集を行ったアンソロジー。この「変愛」シリーズは人気で、『変愛小説集Ⅱ』『変愛小説集 日本作家編』も刊行されている。「恋愛」ではなく「変(へん)愛」である。木に片思いをする「五月」や、バービー人形とのっぴきならぬ関係になってしまう「リアル・ドール」など、タイトル通り、選び抜かれた11篇もの変な愛がぶち込まれている。

かつて「恋」の定義は、身分違いや血のつながりなどによって、「愛の達成に障害があること」であったという。ならば、『変愛小説集』に収められた11篇はいずれも、種を超えた、場合によっては有機物と無機物との境界をも超えた実現困難な愛という意味で、純度100%の恋愛小説である。痛切なまでのひたむきさで綴られる彼らの愛は、読んでいるとつい応援したくなる魅力に満ちている。どうやって応援したらいいのか分からないところまで含めて、本書の魅力である。

 

8.『恋』小池真理子(2002)新潮社

第114回直木賞受賞作。1995年に初版が刊行された本作は、2013年12月にテレビドラマ化され、再び注目を集めた。

舞台は1972年の冬。浅間山荘事件の陰で、一人の女が起こした発砲事件を紐解く形で、物語が進められてゆく。享楽的な雰囲気の中で、倒錯した関係に溺れてゆく主人公に対して読者が嫌悪感を抱きにくいのは、圧倒的な構成の巧みさにある。「今はもう存在しない人が、誰にも言わず胸にしまっておいた真実」という形で提示されたものを前にすると、なんだか神聖な気持ちになってしまうのだ。それから、ときおり差し挟まれる伏線としての回想文が効いており、「ちょっと主人公これ乱れすぎちゃうんか」と読者が感じるちょうどいいタイミングで「哀しみの予感」が提示されるのだ。曲芸の域である。圧力高めの恋愛小説が好きな方におすすめしたい一冊だ。

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