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「トレイン・スポッティング」とは、僕たちにとって何だったのか

加藤広大 加藤広大


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独立して浮遊したサントラとファッション

「トレイン・スポッティング」と言えば、よく引き合いに出されるのがサウンド・トラックで、赤盤と緑盤の2枚が出ている。イギー・ポップからブライアン・イーノ、ルー・リードからプライマル・スクリームやニュー・オーダー、アンダー・ワールドまで取り揃えた豪華サウンド・トラックは、映画を抜きにしても独立できるセレクトだった。

ファンならば一度はイギー・ポップの『ラスト・フォー・ライフ』を聴きながら、道を走ったことがあるはずだ。可愛い女の子を見つけた時に『銀河のアトミック』が頭の中で流れたこともあるはずだ。『パーフェクト・デイ』を聴きながら、絨毯に寝っ転がった人もいることだろう。

映画のサントラ話と言えば、主題歌やキメどころで流れる挿入歌が話題になることが多い。「パルプ・フィクション』だったらディック・デイルの『ミザルー』『レザボア・ドッグス』だったら、ジョージ・ベイカーの『リトル・グリーン・バッグ」てな具合に。

しかし、「トレイン・スポッティング」の話に限っては、皆、思い出の曲が違うのが面白い。イギー・ポップが思い出の人もいれば、劇中のダイアンのごとく「ジギー・ポップ? アンダー・ワールド一択じゃん!」という人もいる。ここで「違う! イギーだ!」と突っ込む人はモテない。僕のことだ。あと、あんまり大きな声では言えないが、ドラッグ経験の有無で好みが結構分かれているとも思う。

ここまで「お洒落映画」の称号がついてしまった背景には、音楽の他にファッションの秀逸さも挙げられる。90年代の若者を描いた映画の中では、とびきり優秀な作品のひとつではなかっただろうか。キャラクターそれぞれに個性があるのも素晴らしい。

例えば、レントンは言わずもがな、シックボーイはヘロインをキメるときにわざわざスーツに着替えるし、ベグビーは白いポロシャツに金ネックレス、ジージャンにスラックス、靴下は白でピンキーリングと、まったく隙がないスタイリング。

全員揃ったときの色合いもいい。レントン、スパッド、ベグビー、シックボーイ、トミーが並ぶと、まるでゴレンジャーのようである。

音楽とファッションが素晴らしい映画は、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」しかり、地域が近い作品でいえば「24アワー・パーティー・ピープル」しかり、ゴマンと存在する。

しかし、「トレイン・スポッティング」が特異だったのは、映画以外の音楽やファションなど、異ジャンル媒体がそれぞれの要素を切り取って「お洒落でっせー!」と持ち上げた結果、音楽とファッションが物語から浮遊してしまい、独立した。それが、お洒落映画として記号化してしまった一因を担っているのではないだろうか。

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