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「トレイン・スポッティング」とは、僕たちにとって何だったのか

加藤広大 加藤広大


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トレイン・スポッティングの(主に己への)影響

10代の頃にこの映画を観て、影響を受けた人は多いと思う。僕も、ドラッグ以外にはすべて影響を受けた。

今でもスキニージーンズを履き続けているのはレントンの影響であり、フレッドペリーのセーターを着ているのはベグビーの影響であり、「007」が好きなのはシックボーイの影響だ。時々うんこを漏らしてしまうのも、もしかしたらスパッドの影響かもしれない。何より、制服や黒タイツがフェティッシュなのはダイアンの影響だ。

ダイアンと言えば、もう可愛すぎて、一時期好きなタイプはダイアンだった。女の子に「どんなタイプの子が好きなの?」と聞かれたら、その子の特徴を混ぜながら答えりゃいいのに「ダイアン!」と元気よく答えていた。いるわけねぇだろ群馬だぞ。

影響だけでなく、偏見も持った。「すげえな外人は、セックス、ドラッグ、盗みやタカリばっかりで毎日を過ごしてるんだな」と真に受けてしまい、その偏見は「ドラッグストア・カウボーイ」や「ラスベガスをやっつけろ」などで、後年更に強度を増すこととなる。

偏見はさておき、飲み屋で同じ世代の客と映画の話になったときに本作の話をすると、懐かしさも含めて結構盛り上がる。自分の経験上、クリエイティブ職には本作を観て何かしらの影響を受けた方が多いように思える。

話題はだいたい、音楽かファッションの2種類。他には「あのポストカード買って家に飾ってる奴いましたよね?」「あったあった! やってた奴いた!」「今思えばあれ、ダサくないですか?」「チョーダサい!」「俺もやってたんすけどね(笑)」という会話が飛び交う。不思議なことに、ストーリーの話はほとんどしない。

不思議と言っても、話の筋は、麻薬をやりまくってやめようとするも、やっぱりやめられずに最後にもう1発、真面目に働こうと思っても長続きせず、(中略)ヤクの取引で一発アテて最後はネコババ、スパッドにんやり。というドラッグムービーにありがちなストーリーなので、特に語ることはない、というのもある。

もちろん、スコットランドの若者たちの鬱憤(うっぷん) とか、エディンバラの治安の話とか、映画から受け取ったメッセージとか、突き詰めればいろいろと解釈や感想戦はできる。が、それをやると飲み屋では残念ながらモテない。

というか、本作は話の筋を超えて、音楽やファッションが記憶に強く残る「お洒落映画」の記号になって、祭り上げられてしまったのだと思う。少なくとも、僕たちの世代においては。

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