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逢坂剛のミステリー小説3選

街クリ編集部 街クリ編集部


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3. 『禿鷹の夜』
(2000年)文藝春秋

禿鷹シリーズは、本作と『無防備都市』(出版社はいずれも文藝春秋)『銀弾の森』『禿鷹狩り』『兇弾』の全5作。主人公・禿富鷹秋、通称ハゲタカは、神宮署生活安全特捜班の悪徳刑事で、警察小説とは言え暗黒小説に類されます。北上野署から神宮署へ移った禿富は、さっそく渋谷を縄張りにするヤクザ・渋六興業の幹部を痛めつけ、みかじめ料を横取りします。縄張りに新興の南米マフィアが進出し、渋六興業の組長暗殺が企てられていることから、禿富と渋六興業は手を結びます。渋六の幹部・水間英人をペルー人の殺し屋ミラグロが襲った際、禿富は水間を助けミラグロを殺すように言いますが、水間はミラグロを逃がします。後に禿富の恋人・和歌子が殺されると、禿富は水間の甘さを攻める一方復讐を誓い、ミラグロと行動を共にしていた2人のチンピラを斬殺します。暗殺の手段としてミラグロは、組長の娘を拉致・殺害しますが、水間ら渋六興業組員と禿富によって追い詰められ、死ぬ前に和歌子殺害の真相を吐露します。

このシリーズの出色は、悪徳刑事・禿富の冷酷非道ぶりです。禿富に比べればここに登場する渋六興業のヤクザ達の方がよっぽど血も通い、情がある人間に映ります。続く『無防備都市』『銀弾の森』でも、ヤクザの抗争と禿富の悪行(弱きを挫き、女を襲い、金を奪い、人を殺す)は収まることなく繰り返され、『禿鷹狩り』で禿富の宿敵となる女警部・岩動寿満子が登場、悪徳の2乗で壮絶な戦いが繰り広げられます。作中、禿富の心情が語られることがないこともあり、渋六興業のヤクザ・水間等の人間臭さにより感情移入してしまいます。また、最後まで禿富が何を求めて生きていたのかが分からないことも、暗黒小説たる所以です。

まとめ

3シリーズともこれだけ色合いが違うにも関わらず、シリーズ全作を読ませてしまう作品世界構築の上手さは、逢坂剛という作家の凄さでしょう。警察小説以外にも、スペイン史に明るい調査マンが歴史の謎を解く『岡坂神策シリーズ』、スペインを舞台にしたスパイ冒険小説『イベリア・シリーズ』も作品世界の多彩さは同様またはそれ以上です。

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