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逢坂剛のミステリー小説3選

街クリ編集部 街クリ編集部


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2. 『しのびよる月』
(1997年)集英社

御茶ノ水警察署シリーズは、同署生活安全課保安二係・斉木斉、梢田威の係長・平刑事コンビによる警察小説。2004年から「所轄刑事」として度々テレビドラマ化されています。『配達される女』(出版社はいずれも集英社)『恩はあだで返せ』『俺たちの街』『大迷走』の4作が続き、5作とも短編連作集でこのシリーズを百舌・禿鷹シリーズのようなハードボイルドな警察小説と思い込んで読み始めると、あまりの違いに驚くに違いありません。

本作は6編の事件解決譚で、その過程での斉木と梢田のやりとりがユニークです。そもそもこのふたりは小学校の同級生で、当時はガキ大将の梢田が優等生の斉木をいじめていましたが、今は立場が逆転。係長で警部補の上司・斉木に、平刑事の梢田は何かと無理難題を吹っ掛けられ、巡査部長への昇進試験もままならなりません。表題作「しのびよる月」はストーカー被害を訴えてきた女性を護衛していた梢田が彼女に付きまとう男を捕まえたものの、どうもその男はストーカーではなさそう。ではなぜ、本当は何をしていたかが斉木の調べで明らかにされ、鮮やかなどんでん返しに驚かされます。

もともとこのふたりは、管内の飲食店で只食い・只酒の常習犯、刑事課を出し抜いて点数稼ぎをしようと企てるなど、お世辞にも褒められた刑事ではありません。扱う事件は「裂けた罠」で解決するような殺人事件もありますが、あとは暴走族、売春、ストーカー、麻薬、強盗事件を、怠惰に争いながら解決してゆきます。第2作『配達される女』では、彼らの二係に武道の達人で堅物の五本松小百合巡査部長が、第4作『俺たちの街』では、キャリアの新人・立花信之介警部補が加わり、それぞれのキャラクターを生かした愉快痛快な事件解決が楽しめます。軽い読み口にも、事件とその解決のプロットがしっかりした短編は、読んで損をさせません。

 

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