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【バイトするなら】ちょっと変わったアルバイトレポート「学生服の採寸」編

加藤広大 加藤広大


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某共学の高校にて、もう戻れない青春を思う

前回の女子校のギャラが、まさかの満額8,000円振り込まれたことに驚きながら、後日、再び都内某所、某高校の門の前におれは立っていた。天候は生憎の大雪、奇跡的に電車は動いていて、何とか辿り着いた頃には、すっかり手足は冷えきっていた。

ともあれ、バイトも2回目となればもう慣れたもので、どんどんと校舎内に入って行く。ちょうど来賓受付のような窓口が見つかったので、怪しいものではありませんよと身分を明かし、今回の設営場所に案内してもらう。

設営場所は多目的教室のようなところで、床の木目や天井の素材が懐かしく、階段から響いてくる若々しさに溢れた声に再びひどく懐かしい気持ちになり、「お前らあと何度も夏休みあるんだろうな、畜生」とか思いながら案内される。

会場に到着し、会社の人に挨拶を済ませる。今回は既に準備万端、設営済み、あとは新入生とその親御さんを待つのみ。という状況だった。そして、ここで驚愕の事実を聞かされることとなる。

「えー、じゃあ加藤さんは男子の担当ですので、ここで接客してください」

分かっていた。分かっていましたよ。当たり前ですよね。男が男の採寸。女は女が採寸。これ、世の中の道理。肩を落として足元を見ると、懐かしい床の木目が若干波打っていた。

試着用の制服サンプルの大きさやメジャーなどの備品を確認しているうちに開始の時間となったようで、学ランやブレザー、各々の中学校の制服を着た、来年の“高校生1年生”が、親御さんとともに教室に入って来た。

「こんにちはー」

と作り笑いを浮かべて制服の採寸に入る。右手にある長机に置かれたメジャーを手にとって採寸を始める。ざっくりと測ったところで、サイズに合った制服を試着してもらう。

しかし、中学3年生と言えばまだまだ成長期。ピッタリとした制服のサイズでは3年間で小さくなってしまう可能性もある。そこで、

「お子さんは何か運動してらっしゃいますか?」
「何か部活やってる?」

などの質問を投げかけるのも重要だ。もしイエスの場合には、少し大きなサイズを勧めたりもする。この辺りは主に親御さんとの話し合いである。

最初はこういった会話も拙いものだったが、20人、30人と測りまくり、喋りまくることにより段々と慣れて来て、こちらもランナーズ・ハイのような状態になる。

「お、耳にタコがあるから、柔道やってるのかな?」
「奥さん! やっぱり大きめのほうがいいんじゃないですかねえ?」
「いやー、私も高校入った時は大きいかなと思ったんですけど、背伸びたんで2年生の頃にはこのくらいでちょうど良かったっすよ!」

そのうち調子に乗って素材の話まで始めたところで担当者からの咳払いが聞こえ、我に返った。

しかし、これが思っていたよりなかなかに楽しい。

「そうねえ、じゃあそうしようかしら」
「じゃあ、それでお願いします」

などと、自分の意見が取り入れられサイズを選定してもらうと、素直に嬉しいものである。制服は決して安いものではないので、もちろんこちらも適当は吹かない。

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