派手な爆発もない、銃撃戦もない、手に汗握る格闘シーンもない、敵と味方が繰り広げる徹底的な知恵比べもない、仕立ての良いスーツは出てこないし、凄腕ハッカーも登場しない。
だが、そんなものはこの映画にとって、ただの一つも必要ないと証明するかのように、スティーブン・ソダーバーグの最新作「ローガン・ラッキー」は娯楽犯罪映画の王道をひた走る。
ソダーバーグ自身が「これは『オーシャンズ』シリーズの従兄弟のような作品だ。でもそれと同時に、主人公たちにはお金も最新技術もない、という点で『オーシャンズ』の逆をいく作品でもある」と語っているように、本作はまさしくその通りの物語である。
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舞台は華やかなラスベガスから寂れたウェストバージニア州へ、主人公は凄腕の泥棒/詐欺師であったダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)から肉体労働者であり開始直後に無職となるジミー・ローガン(チャニング・テイタム)へ。脇を固めていたプロフェッショナルたちは、何だか頼りない素人集団へと、かなりの設定が真逆になっている。ラスベガスの夜に深く染み込んだようなフランク・シナトラのリッチな歌声も、どこか物悲しく土着的な声色をしたジョン・デンバーに代わっている。
本作はまるで「オーシャンズ」シリーズで、華やかさというバブルは弾けてしまったかのように、土気色で野暮ったく、どこか往年の低予算映画の雰囲気すら漂うが、チープさはまったく感じられない。もっと言ってしまえば、「昔どこかで観たような、懐かしい名作映画を観ている」といった気持ちにすらさせられる。この印象は一体どこから来るのであろうか。