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「ローガン・ラッキー」人生に負け続けた奴らが挑む一世一代の大勝負

加藤広大 加藤広大


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人生に負け続け、時代に取り残された面々が企む、一世一代の大勝負

本作で描かれるのは、人生に負け続け、時代に取り残された人たちである。ジミーは娘とは友好関係を築いているものの、妻とは離婚し離れて暮らしている。仕事も解雇され、文字通り首が回らない。弟のクライドはイラク戦争の際に地雷による負傷で片腕を失い、申し訳程度の義手を付けて日銭商売の日々を送り、ローガン一家の「呪い」に縛られている。

ジョーは服役中であり、隠していた金も妻に見つかり持ち逃げされる始末。サムとフィッシュに至っては、何だかもうすべてが駄目である。この、にっちもさっちもいかない片田舎で一発逆転を狙うべく、ジミーはシャーロット・モーター・スピードウェイの地下金庫に眠る現金を強奪する計画を立案する。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BODE3YzBkYjQtNjRhMi00MzM4LWJmMDItZjY0YjBkNTk3NjVjXkEyXkFqcGdeQXVyNjk2MjI2NTY@._V1_.jpg出典:IMDb

犯罪計画を立て、仲間を集め、準備を行うシークエンスは、「オーシャンズ」シリーズをご覧になったことがあればお馴染みだろう。立案者の口からターゲット、手口、必要な人・モノなどが、今回はボ・ディドリーの『ロード・ランナー』をBGMとして、小気味良いテンポで説明される。ソダーバーグ節が炸裂する名場面であるが、今、一世一代のデカいヤマを踏まんとしているのは、ラスベガスに乗り込んだ玄人衆ではない。まったくの素人衆である。

ジミーは当該レース場の陥没穴を埋める工事をしていた経験から大博打を思いつく。小学生の工作レベルの模型を作成し、「またはじまったよ兄貴」と言わんばかりの顔つきのクライドにドヤ顔で説明をはじめる。しかし金庫の開け方をネットで調べたものの、どう開けるのかがわからない。なので「爆破のプロを仲間に入れよう」と、マジも大マジな顔で提案する。金庫の開け方がわからないなら爆破する。実に素晴らしい。非常にアメリカらしいシーンである。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BM2Y1NDliMTItZDVkNi00ZjBjLTgxNWEtYjRiMjgxYzhmNDg3XkEyXkFqcGdeQXVyNDg2MjUxNjM@._V1_SX1777_CR0,0,1777,914_AL_.jpg出典:IMDb

計画自体は、まるで単純に思いついたような、稚拙と言ってもいいほどのシンプルさで、穴もそこかしこに空いている。爆破玄人であるジョーを首尾よく引き入れたのはまだしも、ついでに仲間となったバング兄弟は見るからに間抜けでまったく使えそうにない。並行して刑務所からの脱獄計画も企てなければいけないし、次々と起こる細かな問題に軌道修正を余儀なくされる。果たして仕事は上手く運ぶのか、どうなるローガン一味。

ところで、この素人が考えた「これならいけるんじゃね」という隙だらけの計画は、脚本家のレベッカ・ブラントの幼少期の体験に端を発している。実はレベッカ自身もウェストバージニア出身であり、炭坑で働く労働者たちのこともよく知っている。そして、母親に連れられて行ったドライブスルーの銀行にあった気送管に、よくお金を入れさせてもらったという思い出から、本作における現金強奪の着想を得たと語っている。ちなみにシャーロット・モーター・スピードウェイでの陥没穴の件も、実際の出来事であり、失業中の炭坑作業員が雇われたことがあるそうだ。

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