その3「あの宿、出るんです。南京虫が」
これが出た時が一番「恨めし」かったです。「南京虫」。初めて聞いた方もいるかもしれません。南京虫とはトコジラミのことで、旅人の間では通称「ナンキン」とか「ベッドバグ」とか言われています。ネットで宿を探している時、ひとつでもこのワードが出たらまずそこの宿はアウトです。
ちなみに、私がコイツと出会ったのはフランスのおパリの宿でした。アジアやインドのような出そうなところでも出会うことなく無事に旅を続けてきて、もう南京虫の存在なんて完全に忘れていました。そんな時でした。白い清潔そうに見えたシーツの上に茶色い点が・・・。
「ちっちゃい虫・・・?」
その時はまだそれが南京虫だってことに気づかなかったんですね。ピーンと指先ではじき飛ばしてやりました。翌日くらいから赤い斑点が出てきたかと思えば、3日目くらいにはポツっと蚊に刺されたようなふくらみ。そしてそこからが急激にブワっと赤い点々が体中に広がり始めたのです!
赤い点がブツブツブツブツ・・・!!
「シェー!!」
まさかおパリで南京にやられるとは思わなかったでヤンス! イヤミもビックリのパリでの大事件。赤いブツブツは次第に水膨れのようになり、肌はブヨブヨにただれあがる。これはもう体中にウロコがはえた「蛇女(作・楳図かずお)」に勝る、恐怖の「南京女」です。
そしてその痒みったら、蚊に全身を刺されたくらい、いやもしかしたらそれ以上の痒さです。とにかく夜は眠れません。
怖いのは、この南京虫というのは夜中になると現れて、人間が寝ている間ずっと体の上を這いずり回り、朝が来るまで何ヵ所も攻撃していくということ。つまり、数日間に渡り毎晩、私のシルクのような玉肌は南京虫にチュウチュウ吸われていたのです! その絵を想像してください。
ギャー!!
やっぱり想像ヤメッ!
怖すぎる。
と、いろいろ書きましたが、これは決して安宿体験を反対するものではありません。しかし一例としてこういうことも起きかねないので、これを読んだことで予防して、楽しい旅にして頂ければと思っている次第であります。それはそうと、このコラムのトップページをよーくご覧ください。画像の真ん中に透けてる人影が・・・。
あ、私でした。
All photo by 旅人マリーシャ