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旅立ちの前に出会ってしまう個性豊かなタクシードライバーたち

ユーコ・ノラ ユーコ・ノラ


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ケース2 人を簡単に殺したくなる「猟奇的な運転手」

夜の便の搭乗のため、この時も空港までタクシーを利用した。世間話で喋り倒すタクシー運転手と無口なタクシー運転手。その2パターンなら幾度となく出会ってきた。しかし、この運転手は乗った瞬間から『猟奇的』であった。

お客さんを乗せるちょっと前にね、80歳くらいだったかなあ〜。80歳くらいのものっすごい紳士を乗せたんですよ。

ちょうどその紳士を乗せる前にね〜、狭い道を通ってたら若い集団がね、道幅いっぱいに広がってダラッダラ歩いていたんですよ。僕はね、ああいう若者が殺したくなるほど大っ嫌いなんですよ、はは

 
突然の告白に驚愕する。
 

それでね〜、その紳士を乗せた時に僕は聞いたんですよ。その若者たちのことを話して、「僕はそんな若者を見ると殺したくなるんですけどね、この時代のこんな若者についてどう思いますか?」ってね。そしたらその紳士はね、「僕はもう古い人間だから、そういう意味でリタイアした人間だから、今時の人たちについて言うことは何もありません。でもね・・・」

 
一瞬一息溜めてその運転手は続ける。
 

その紳士、最後になんと言ったと思います? 「あの頃のいい日本は、どこにいっちゃったんだろう・・・」ってね、言ったんですよ。

 
チラチラと後部座席の私の顔を伺うように彼のドヤ顔がちらつく。
 

(何を言いたいんだろうこの人は・・・)

僕はねえ、横断歩道で右折しようとしている車がいれば、子どもには走って横断歩道を渡るように怒りますよ。相手に迷惑をかけないように、邪魔にならないように。それがねえ、それが日本人ってものでしょう!

 
「またずいぶんと片寄った日本人らしさだな」と私はため息を漏らしつつ、若者に対する不満を垂れ込んでいるその運転手の後ろで、私もまた、日本人らしさを履き違えているこの年配の運転手を見ながら日本の将来を危うんだのだった。簡単に人に殺意を抱く運転手が乗っているタクシーには絶対に乗りたくないものである。

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