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【広告・デザイン業界震撼!】本当にあった怖い話「デザイナー編」

加藤広大 加藤広大


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kowai_talk

【あなたの知らない世界】本当にあった怖い話「デザイナー編」

東京での話なんですがね、フリーのデザイナーになったばかりの、まあ仮にA君としておきましょうかね。

独立して念願のフリーになってね、やっぱりそうなると、仕事が欲しいわけですよね。かといって、おいそれと仕事なんてもらえるわけじゃないんで。細かい、地味な仕事しか来ないわけなんですよね。

「なんかいい仕事はないかな」なんて思っていたら、そんなときに知り合い、仮にBさんとしましょう、Bさんから「パンフレットを作りたい」という話が来たんですね。

で、「ええ? どんなパンフレットですか?」って聞いてみると、Bさんが立ち上げる新しい会社のパンフレットで、「クリエイティブな業種だからフレッシュでアグレッシブなやつ」だって。

最近つまんない仕事ばっかりだったからクリエイティブっていうのが気に入って、「いいなあ」と思いながら「僕、やりましょうか」ってなった。

で、制作するのはいいんですがやっぱり出てくるのはギャラの問題で、「変形A3で8ページ、諸経費込みで30,000円」っていう額を提示されて。皆さん、お分かりの方も居るかと思いますが、これ、ものすごく安い金額なんだけど、「A君のセンスを信用してるから、全面的にお任せするよ」って言う言葉を信じて請けちゃったわけだ。

「昔お世話になった人が自分を頼ってくれたんだ。たまにはこういう楽しそうな仕事もしないとな、お金じゃねえよな」って口約束だけど契約も済んで、いよいよ製作に入るわけだ。「よっしゃ、いっちょカッコいいの作ってやるか」って、ねえ。

さっそく、最初の打ち合わせをして・・・バババーっとイメージを出してね、アージャナイコージャナイ言い合ってね、固めていくわけだ。

バッバッバッと、イメージを出してね、「これいいね、あれいいね」って言って、少しずつ少しずつ、固めていくわけだ。

で、Bさんも意見を言ってくれるんだけど「もっとフレッシュな感じで」とか「驚きがあるデザイン」とか「シンプルだけど目を引くデザイン」とか、抽象的なことを言うんですよ。

A君は「なんだか嫌な感じがするなー、ちょっと怖いなー、もしかしたら地雷案件かなー」なんて、うっすら思ってきたので、取り敢えずBさんのイメージの統一を図ろうとしたんです。

なんとかBさんの散らかったイメージをまとめて「これでいきましょう」ってなって打ち合わせが終わって、外に出た時はもうすっかり真っ暗、納期も差し迫ってるから急いで帰って、さっそく初稿を制作しはじめたんです。

やっとこさデザインが出来上がった。「一発OKだといいな」と思いながらBさんにカンプを送付して一息ついていたら、Bさんから電話がきたんですね。

「ちょっといろいろあれから考えて、変更したいところがあるから、打ち合わせをしたい」って。

そのとき、A君は「はてな」と思った。

「変だな、おい」

しっかりイメージは統一して、言質も取って、デザインした。それは分かっているんですよね。間違いないデザインをしたはずなんだ。あったとしても軽微な修正なんだ。

「どうもこれ、本当に地雷案件だぞ」と思ったんだ。

でも、電話で問答しても埒があかないから、結局打ち合わせをすることにした。指定された場所は大衆居酒屋。

これまた不安な気持ちになって、打ち合わせ場所までタクシーをブーーーンと走らせた。

夏の気怠い夜の空気のなか。車内が生温いタクシーに揺られて、ブーーーン。

到着すると、Bさんは既に酔っ払っていて顔が紅いんですね。どう考えてもおかしい。「これ、打ち合わせじゃないな」A君はそう思いながら席に着いた。Bさんが麦焼酎の水割りを作りながら切り出す。

「いろいろ考えたんだけどさ、ちょっと弱い気がしてね、もっとこう、インパクトないかな?」

A君の目の前には靄みたいなものがかかった。サァーーーッと血の気が引いちゃって、体温が下がった。けれど、「まあ、しょうがねえな。お世話になったしな」と今一度、全体イメージの仕切り直しと、レイアウトをあれこれ考えなおすことにしたんです。

なんとか打ち合わせを終えてね、電車なんか走っていない時間だったから、寂しく夜道をとっとっとっ、歩いて帰ったんです。

で、まったく新しいデザイン、レイアウトで2稿を出したんですね。そしたら翌日、また電話がかかってきた。

「イメージと違う」って。

「この前の打ち合わせのとき、ここはこうしてこうするって結論になりましたよね?」

ってA君は訴えたんだけど、Bさんは

「え? そんなこと話したっけ? 覚えてないなあ」

の一点張り。

「いけねえ、ヤバいなこれ」と、A君は初めて踏んでしまった地雷の破壊力を思い知ったわけです。

でも、もう遅い。こんな仕事、「じゃあ他の人に頼んでください」って言えばいいんですけど、昔お世話になった人だし、っていう情が邪魔をするんですね。「仕事はきっちりやりたい、納得させられないのはおれの実力不足だ」ってえ意地もあったんでしょうね。

「じゃあどうしましょうか?」

って言ってもまた「パンフレットの折り方に工夫を持たせてインパクトのあるギミックが欲しい」とか、話にも出てなかったことを言うわけで、これまたらちがあかない。

長電話するうちに、Bさんが

「じゃあうちの会社に来て、一緒に見ながらやろう。そうすりゃ早いでしょ」

と言った。A君は

「嫌だな、おい」

と思った。往々にして、出張校正っていうのはろくなことにならないですよね。ギャラが安いなら尚更です。そんなことに時間を割いてられない。けど、Bさんはすっかりその気になっている。

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