絶対におすすめしない、花粉症を根性で治すたった1つの方法
人間的に成長するには何が必要か。ずばり心の広さである。小さなことで目くじらを立てているヤツよりも、
3月。春を告げる午後の日差し。部屋の窓から見下ろす街路樹も、心なしか柔らかな空気をまとっている。2匹のスズメたちが、枝から枝へ跳び移って遊んでいる様子が、いかにもほほえましい。わたしは目を細め、新しい季節の到来にそっと身をあずける。窓を開けた。部屋に一陣の風が舞い込んでくる。なぜだろう、少しだけ、胸が苦しい。鼻の奥がつんとして、悲しくもないのに涙があふれてくる。
ブエクシュ!
わたしはひとつ、クシャミをする。澄みきった鼻水が、顎先までたれる。続けて、もう一度。
ブエクシュ!! エク、エ、ブエクシュ!!
なめらかな放物線を描いた鼻水は、窓枠に落下する。アルミサッシの上で陽の光を受け、きらきらと輝いている。涙が頬を伝い、首筋を濡らす。わたしは静かにそれをぬぐう。にっこり笑って、こう呟く。
「許すわ」
これだ。この寛容さ。人間的に大きい。すごく大きい。余裕のある大人は戦わない。鼻水がたれても、マスカラが流れ落ちても、黒い涙と共に、全てを水に流すのである。いいではないか。すでに人間的に成長した感じがすごくする。だが、まだだ。右の頬をぶたれたら左の頬を差し出すのが、正しい喧嘩の仕方である。そのためには、部屋に引きこもってこんな原稿を書いている場合ではない。外に出なくては。