【人のことを気にしすぎる「良い人」に】セネカ『生の短さについて』(2010)岩波書店
セネカの性格の悪さは群を抜いている。主張は実にシンプルだ。自分がいずれ死んでしまうことを考慮して、偉大な事業などに手を出さず、自分のためだけに生きろ、ということ。セネカによれば、やりがいのある仕事に就いて己の生活をすり減らすことは「人生の浪費」なのだという。
それだけではない。彼の攻撃はあらゆるものに向けられる。格闘技は「恥知らずな所行」であり、床屋で髪の毛を整えることに夢中になる行為は「頭の綺麗さは心配しても、頭の健康は心配しない」人間のすることである。歌を作ったり歌ったりする人々のことを「わざわざ声をゆがめて」と鼻で笑い、宴会に列席する人々のことは「飲むにしろ、食べるにしろ、人に見せびらかさずにはいられないのだ」と決めつける。
完全に僻みである。
周りに気遣うことが上手すぎる、あの人にプレゼントして、こいつを見習えと
【体を無視する大人へ】尹雄大 『体の知性を取り戻す』(2014)講談社
体について語るのは難しい。私たちは体そのものだからだ。暑いのか寒いのか分からない、疲れているのを自覚できないような人間は皆、我を忘れているのである。
そんな呆然自失の体たちに贈りたい本書は、平易な言葉で「体の賢さ」について書かれた新書だ。
「小さく前へならえ」という教育で私たちが失った体ののびやかさ。言葉以前に存在する体と出会うため、我々は動く。筆者が武術のトレーニングを通じて得た体験をベースに、日常生活の見え方が変わるような新しい視点が綴られている。
ちょっと嬉しそうに不摂生を報告してくるあの人に、無言でプレゼントしてみよう。
【妄想好きのあの子へ】レオ・レオーニ『平行植物』(2004)筑摩書房
「スイミー」で有名なレオ・レオーニが手掛けた妄想植物図鑑。「時空のあわいに棲む」という平行植物の生態を
タダノトッキは<森の角砂糖バサミ>と同じように
叢生 だが、時としてひじょうに広い地域にわたって密生する。一例をあげれば、ボルロフ海峡からほど遠くないアッカーマンズランドのツンドラ地帯には、北極の凍てついた地平線の彼方まで見わたす限り、タダノトッキの原野が広がっている。
引用:レオ・レオーニ『平行植物』(2004)筑摩書房、p.116
もちろん全部ウソである。
こういうウソの情報が体系的に並んでおり、その設定があまりに細かいので、だんだん「スイミーの作者マジでやべえな・・・」という畏怖の感情が湧き上がる。さらに、上述したタダノトッキは、平行植物のなかで最も「カラフルな黒」だ、というのだから恐れ入る。細かな描写を追ううちに、想像力の
妄想好きの人に贈りたい、設定厨なら垂涎の世界。
まとめ
以上、プレゼントしたいお相手のタイプ別に、おすすめの小説を紹介した。贈られる人間の造形がやや偏っている気はするが問題ない。キラキラしたセレクトになったと思う。マジで。参考にしていただけたら嬉しい。