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10年後、20年後に再び出会って感動した名著たち

加藤広大 加藤広大


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中原 昌也『エーガ界に捧ぐ―完全版』

中原昌也が2001年から2009年まで雑誌『SPA!』で連載された映画日誌を書籍化した本作、全401回が448ページものボリュームで収録されており、寝ながら読むと寝落ちしたときにダメージがデカいという最大のデメリットすら、数ページ読んだだけで消え去る珠玉の映画評論集です。

映画のことを殆ど書いていない回もあるため、当該映画を観ていなくても楽しめるという衝撃のスタイルが目立ちますが、鋭い観察眼と映画愛、そして衒学的げんがくてきな話は極力避けているものの、見え隠れするエスプリは、読めば読むほど癖になります。

通読できるボリュームではありませんが、昔の映画を観返したときに、「そういえば載っているかな」と確認するのも面白く、映画ファンならずとも持っていて損はないでしょう。

澁澤 龍彦『世界悪女物語』

澁澤龍彦により書かれたエルゼベエト・バートリ、マリー・アントワネット、クレオパトラなど、古今東西の「悪女」の物語は、何年経ってから読んでも、その甘美さや恐ろしさは色褪せません。

悪女だ小悪魔だと良く言われますが、本書に登場する女性たちは巷間言われるそれとは比べ物になりません。なにせ権力を持っていますし、その力に群がる人間たちがまた悪い悪い。さながら1本の映画を観ているかのようです。

この本、何が良いって解説が美輪明宏なんですね。澁澤龍彦という人間の説明から「悪女」についての説明、さらにはこのような本や歴史、美術品を鑑賞するための心構えまで余すこと無く説いている。まさに解説の理想形です。

菊地成孔・大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・キーワード編』

菊地成孔/大谷能生のコンビが東京大学で行ったジャズ講義録で、主にブルース、ダンス、即興、音楽理論の4つをメインテーマに縦横無尽に展開される講義は、音楽素人には難しく、理解の及ばない面も多々ありますが、なぜかそれが面白い。

だって「理論の確立と、それに対するカウンター&ポスト・ムーヴメントについて〜バークリー・メソッド、LCC、ラング・メソッド」とか、もう聞いただけで「一体何のことなんだ」とページをめくる手が止まりませんが、めくってもめくっても意味がわからない。けど、面白いんですね。

で、一度読み終えて離れ、色んな本や音楽に触れて、また戻ってみると今度は少しだけ読めるようになっている。これが本当に気持ちよく、今までの経験の点と点が繋がって線になる快感は一度覚えたらやめられません。

本書だけでなく、小難しかったり、理解できなかったりする本や音楽、映画は、見聞を広めて鑑賞し直してみるとまったく違った受け取り方ができるものです。わからないことに興味と持つことは、こんなにも面白いんだと意識の変革を促してくれる良書です。

 

以上、「10年後、20年後に再び出会って感動した名著たち」でした。まだまだたくさん出てきてしまったのですが、毎度のことながら締切間近なので今回はこの辺で。今度は写真集か何かやります。

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