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10年後、20年後に再び出会って感動した名著たち

加藤広大 加藤広大


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ティモシー・リアリー, R・U・シリアス『死をデザインする』

アメリカの心理学者というよりも、LSD研究でお馴染みのサイケデリック伝道師、ティモシー・リアリーが遺した一作で、1996年に刊行され、なぜか2005年に翻訳版が発売されました。どこに需要があったんだ。

内容の方は、癌を宣告されたティモシー・リアリーが「え? 死ぬの? じゃあ死をデザインしなきゃ」といったノリで、死に関する話や、意識はどうなるのか、記憶などは保存可能であるのかなどについて語られています。

今、「胡散臭ぇなあ」と思ったあなた、安心してください。その通りです。滅茶苦茶胡散臭いです。

当時は完全にお洒落ぶって購入した私も、今では色んな本を読み、すっかり書いてあることが・・・・・・ぜんぜんわかりません。ですが、ユーモアのセンスを忘れずに、権威を疑い、自分で考えるという彼の基本姿勢が伝わってくる意外な良書です。

かなりのオカルト要素も入っていますが、トンデモ本と侮るなかれ、鋼鉄の知性とユーモアに裏付けられたリアリーの思考は今の時代になっても色あせていませんし、現在の世界がこうなることを予見していたようにも思えると書くと、少し褒め過ぎでしょうか。

ウィリアム・バロウズ『ジャンキー』

稀代のジャンキー、ウィリアム・バロウズの処女作にして、最も読みやすいのが本作「ジャンキー」です。淡々とした翻訳は鮎川信夫の手によるもので、訳がまた素晴らしい。

何回チャレンジしても通読できない「裸のランチ」と違い、こちらはとてもわかりやすく、一気に読めてしまいます。私も何度も読んでいますが、読む度に文字の向こうに見える景色が変わるんですね。とても映画的な小説だと思います。

「麻薬とは生き方である」とはウィリアム・バロウズの弁ですが、そんな生き方を選択した人間たちの習性は「アル中地獄」にも通じるものがあります。もし機会があれば、ぜひ併読してみてください。

三島由紀夫『命売ります』

三島由紀夫にしては珍しい娯楽長編小説で、コピーライターの山田羽仁男が自殺に失敗し、新聞広告に「命売ります」という広告を出すところからはじまる物語は、読みやすく軽妙な語り口ですが、よく読んでみればなんのなんの、とんでもない文章技術の結晶であることがすぐさま判明します。流石、三島。

「不道徳教育講座」や「三島由紀夫レター教室」がお好きな方は、きっと楽しめることでしょう。

20代のときは大変面白いエンタメ小説として、30代になると「もしかしたら三島の本心はこの作品にこそ書かれていたのではないか」と楽しめるなど、邪道だと言われようが私は三島由紀夫の著書のなかでは、本作が最も好きです。

筒井康隆『最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集〈1〉』

本書は筒井康隆の短編集であり、「最後の喫煙者」の他にも「老境のターザン」、「万延元年のラグビー」、「問題外科」など、まさしく「ドタバタ」に相応しい傑作集ですが、つい何度も読んでしまうのはやはりタイトルに掲げられた「最後の喫煙者」なんですね。私が喫煙者だということもあります。

現在の嫌煙運動などにより、「最後の喫煙者」のような世界に段々と近づいてきているなどとは口が裂けても言いませんが、本作のような冗談とユーモアが通じる、受け入れられる世の中が続くことを切に祈りながら毎回煙草をふかしつつ、読んでおります。意外と今の自分が持っているユーモア/冗談が通じる度合いを測るバロメーター的にも使えるのではないでしょうか。

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