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10年後、20年後に再び出会って感動した音楽5選

加藤広大 加藤広大


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前回、同じテーマで映画について書きました。今回は「10年後、20年後に再び出会って感動した音楽」を題材に色々と書かせていただきます。

昔聴いていた音楽をある日聴き直したらまったく違った曲に聴こえたなんてこと、ありますよね? ありませんか? そういうことにしておいてください。それでは早速、1曲目です。

The Beach Boys『Wouldn’t It Be Nice』

説明不要の大名盤、ザ・ビーチ・ボーイズの1966年作品「ペット・サウンズ」の1曲目に収録されているのが『Wouldn’t It Be Nice』です。邦題は「素敵じゃないか」、うん、ダサいじゃないか。まあ台無し感もある意味素敵ですが、曲の方は紛うことなき名曲です。

Reference:YouTube

ブライアン・ウィルソンの手によるメンバー置いてけぼりの超絶多重録音と、ハル・ブレイン、ビリー・ストレンジ、グレン・キャンベルなどなど、豪華フェスが5日間ぶっ続けで開催できるほどの腕利きミュージシャンを集めたモンスターアルバムだったのですが、発売当時は快く受け入れられませんでした。いわゆる、後に評価された名盤というやつです。

ファンの方ならいざしらず、そこまで興味が無い方には、ザ・ビーチ・ボーイズとは、おそらく『サーフィン・U.S.A.』のイメージぐらいしかないでしょう。もしかしたら反町・竹野内ラインを想起する方もいらっしゃるかも知れません。

Reference:YouTube

私も当時は小僧でしたから、単純にサーフィン・ホットロッドサウンドを期待して購入したのですが、その要素はかろうじてコーラスワークに散見される程度で、面食らった記憶がございます。

しかし、そこから十数年、いろんな音楽を通り、再びこの曲と出会ったときの感動は今でもはっきりと思い出せます。紫煙しえん漂う音楽バーで、巨大なタンノイから聴こえて来たイントロが空間を満たした瞬間、このサウンドの「意味」が分かり、何ならちょっとちびりました。

ちなみに、『ペット・サウンズ』のレコーディング風景は近年「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」という映画で再現されています。

録音されたユナイテッド・ウエスタン・レコーダーズのスタジオ内風景はもちろん、当時のスタジオミュージシャン、ビーチ・ボーイズの面々(ジョン・キューザック以外)もほぼ完コピと言っていいほどの再現度で、何ならブライアン・ウィルソンの鬱表現も非常にレベルが高く、症状をもらってしまうほどですので、鑑賞時はお気をつけください。

ボ・ガンボス『トンネルぬけて』

お次はボ・ガンボスが1989年に発売したファーストアルバム「BO & GUMBO」より『トンネルぬけて』をお送りします。ボ・ディドリーとガンボを混ぜ合わせてバンド名を付けたとか、村八分との邂逅かいこうとか、その山口冨士夫は「トンネル天国」ってたなとか、知識を並べ立てるよりは、以下、非常に個人的な話になってしまうのを先に謝罪いたします。

Reference:YouTube

まあまあ好きな中堅どころの曲を、ある日ふと聴いた時、思いもよらず宝物のようになってしまったという経験をされた方は多いと思います。要はその時の匂いや、気持ちや、居た場所、つまりシチュエーションにやられてしまうというやつですね。

この曲、好きではありましたが、大好きというわけでもなく、iTunesに取り込んだものの、日々増えるライブラリのなかですっかり忘れ去られてしまい、片隅にひっそりと陳列されていました。

で、ある秋の夜中、あんまり仕事が無いときでした。小銭のためにやりたくもない仕事をやって、金もないのに酒飲んで、恵比寿の路上を千鳥足で歩いていたとき、涼しい風が頬を撫でた瞬間に、シャッフルされたiPodから

風が騒ぐ夜は 家へ帰りたくないよ
ボ・ガンボス『トンネルぬけて』

って、どんとの声が聴こえてきたんです。もう、曲が終わるまで道端で動けなくなりました。なんだか世の中に許された気がして、悩み事もすっかり消えて、まさに文字通り「トンネルをぬけた」んですね。人生を変えるような出来事ではなかったけれども、ふとした日常のなかで、人生もそんなに悪くないなと思わせてくれた音楽です。足を向けて眠れません。

街角のクリエイティブ ロゴ


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