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「オクジャ」今年の流行語は「オクジャ」で決定だ

シーズン野田 シーズン野田


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黒澤明と言われる所以は、彼の作品に頻出するピョン・ヒボンが志村たかしに似ているというのも忘れてはなりません。

今回のピョン・ヒボンは呆れるほどにきたないじじいを演じており、最高です。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BODc5OTE2NjMtNDU4Mi00MGVmLWE0NGQtMjBhMGE2ZjJhYWQ3XkEyXkFqcGdeQXVyNjk2MjI2NTY@._V1_.jpg出典:IMDb

歳をとればとるほど、疲れてしんどくなって、いろんな事がどうでもよくなって最終的に汚くなるような、見事な汚れ具合です。たまたま撮影現場の近くに住んでいたおじいさんをノリで連れてきたような自然な演技で、途中までピョン・ヒボンであることを気がつきませんでした。いやぁ、ピョン非凡ですわ。

しかし、向こうの役者さんってとびきり演技が上手に感じるのですが、本当にうまいってことなのでしょうか。それとも言葉がわからない分、甘めのジャッジをしてしまうのでしょうか。

僕らは言葉で繋がっている

ハンバーグが怖いです

一旦、牛肉を粉々にしたにもかかわらず、再び固め合わせられ、時には豚肉と混ぜられ合挽きにされるという残虐性に一種の恐怖を覚えるからです。肉達は沈黙のまま得体の知れない料理に変貌していく。彼らに選択肢はありません。わけも分からず玉ねぎとともに甘辛く煮込まれる牛丼鍋から聞こえるのは、グツグツと煮える音だけ。彼らは何も発しません。人間の美味しいものを食べたいという変態性の前では、彼らの叫びはただの空気振動でしかないのです。

本作の中でも大企業ミランドの社長は「食えないものは鳴き声だけ」と言っています。

さて、実はこの作品の肝はここにあります。命は大事にしましょう! 残さず食べましょう! とかではありません。

言葉を知らずとも通じ合えるのか。これこそが本作品の最大の問いかけなのです。

https://pixel.nymag.com/imgs/daily/vulture/2017/06/28/28-okja-3.nocrop.w710.h2147483647.jpg出典:VULTURE

「翻訳は尊い」は本作の重要なキーワードであり、タトゥーにする者もいましたが、言葉を知らないことによって生み出される悲劇がこの映画では描かれているのです。そもそもこの作品は英語と韓国語が入り混じっており、常に翻訳を意識させるような構造になっています。吹き替えで観ると英語のみが日本語で吹き替えられ、韓国語はそのまま字幕。話が「誤訳」によって進んでいくので、両方の言語を吹き替えることができないのです。
 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BZjM5MzJmNDktYWQ2Ni00ZTE3LWJhNTUtYmU1NDgwNDkxYWI2XkEyXkFqcGdeQXVyNjk2MjI2NTY@._V1_.jpg出典:IMDb

ミジャとオクジャはお互いの言葉を理解できます。ミジャはオクジャの耳に、こそこそと何かを伝えるのですが、何の話をしているのかわかりません。多分子供の言うことなので、チョコだか、うんこだか言っているだけだと思いますが、二人にしかわからない言葉が存在しています。

しかし、オクジャの言葉など知らない人間からしたら、オクジャはただの食料でしかありません。もし、オクジャが「食べないで〜〜〜」と言えたなら、きっと躊躇ちゅうちょしてくれることでしょう。でも彼らは言葉にならぬ言葉で叫ぶしかない。

ミジャもまた英語は話せません。自国語で「オクジャ〜」と叫びながら体当たりで、なんとかアメリカに連れて行かれたオクジャの元まで辿り着きます。

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