そして、最終的に彼女の武器になったのは言葉でした。「バカでもわかる英語」という本を読み、英語を必死で覚え、ミランド社の社長にオクジャを返すよう交渉するのです。こうしてミジャはオクジャを見事に引き取る事ができ、やっぱ英語って大事だよね〜と笑顔で帰るミジャ・・・というわけにはいきません。ミジャの顔色は冴えません。彼女は言葉を覚えてしまったが故に失ったものを実感するのです。ミジャは
ミジャは多くの豚の中からオクジャを屠殺場の中から必死で見つけ出そうとします。まるで「千と千尋の神隠し」のラストで、豚の中から両親を探す千尋を思わせるシーンです。しかし、ポン・ジュノ監督はそんなに甘くはありません。しっかりとミジャに工場見学をさせるのです。「ミジャの工場見学」ってタイトルでもいいくらい。
出典:Peta2
大人からしたらなんてことない光景です。全て知っている。もちろんミジャもわかってはいました。しかし実際に、銃で撃たれ、皮を剥がれ、切断される豚達の姿を目の当たりにしたことで、ミジャのいた無邪気な世界が残酷な現実に翻訳されてしまったのです。山奥で平和に暮らしていたあの頃はもうありません。失ってしまった過去は、同じ形で取り戻す事はできないのです。まるで恋愛のよう。一度別れたカップルが復縁しても上手くいかないみたいな感じです。童貞だからわかりませんが。
ミジャとオクジャとぼとぼと帰る中、その後
しかし、納得できないのはこの物語「R15+」なんです。つまり15歳未満は観るなってことなのですが、主役のアン・ソヒョンは13歳。15歳未満が観てはいけない作品に15歳未満を出すというのはいかがなものなのか。出るのはいいが観るのはだめってことなの? だったらアン・ソヒョンはどうやって自分の演技をチェックすればいいのか。その辺の線引きがよくわかりません。
なんなら子どもこそ観るべき作品じゃないのか。豚も牛も鶏もグミもわからない、うちのバカな姪っ子達にも見せてあげたい。この世の裏をいつか知るなら、一人より頑張る主人公の少女と一緒に知る方が心強いじゃないですか。そうか、映画そのものが翻訳機としての機能をもっているのか。なるほどな。とまぁそんな映画です。なかなか見ごたえのある映画でした。
さて、なんとなくポン・ジュノはそろそろフルCGアニメでも撮るんじゃないでしょうか。今作は「未来少年コナン」を意識したと言っているし、「トトロ」や「千と千尋」オマージュもあるし、アニメへの興味がもしかしたらあるのではないかと。「グエムル」や今作でのCG合成の実績を経て、次はピクサーのようなフルCGに挑戦なんてこともありそう。そして、それが18禁だったりしたら嬉しいです。
スタッフのみなさん、おつかれさまです! オクジャ〜〜!!!