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「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」全然スローじゃないスローライフの母

こいぬまちはる こいぬまちはる


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本作は、ターシャの暮らしぶりに密着したテレビドキュメンタリーシリーズをまとめたもので、さらにターシャが亡くなった後の家族達の様子などを加えた映画作品になっています。

彼女が、徹底して貫いたナチュラルなライフから「スローライフの母」と呼ばれ、コーギコテージと呼ばれる美しい庭が「アメリカコテージガーデンの手本」と崇められているのはもちろん知っていました。けれど映像で観るとなかなかの衝撃。

「赤毛のアン」や「大草原の小さな家」で見たような、小花柄の手作りロングドレス。細身で背筋がシュっとしたその姿で庭の草取りをし、鍋をかき回し、鳥小屋の世話をする。実際に動く彼女を見ると、脱俗している・・・というより、完全に別世界、ターシャの世界。何これ、ここ実在するの? ホントに現代? そもそもターシャってリアル? こ、このおばあちゃん、本気な人だ・・・すげぇ・・・。

クセのありそうな薪ストーブが鎮座する台所、家具や厳選されたアンティーク食器、庭一面に広がる明るい緑がグラデーションをなし、そこに弾けるように乗る季節の花々の鮮やかさ。

台所仕事をしながら、「何もかもゆっくりでごめんなさいね」とこちらに言うターシャ。マイペースという訳でなく、草花が、鳥が、コーギ犬が、薪ストーブの火種が、煮える鍋が、その空間すべてが、彼女に合わせて時を進めているかのように見える。ターシャ、時間操ってる?

「ここには私の大好きな1人の時間がある」とコーギ犬をなでながら微笑むターシャ。

庭が見えるコテージ先に花と緑を愛でながら「お昼のお茶の時間はとても大事」と、熱々のミルクティーをゆっくりすする裸足のターシャ。

「色んな事いわれても、聞き流しちゃうの」
「忙しすぎて心が迷子になってない?」
「人生なんてあっという間に終わってしまうわ、好きに生きるべきよ」
「幸せは自分で創りだすもの」

カルタができるくらいどんどん格言が飛び出します。こ、これがマジもんのスローライフか・・・。色々超然としていてもうネタみたく見えてきた頃、庭を眺めながらターシャが言うのです。

「すぐにできた庭じゃないのよ、ここに来て30年かけて作ってきた庭なの」

忘れていました。究極のスローライフを見ながらため息をついていたけれど、ここに到達するまでの過酷な過程を全く考えていなかった。

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