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刑務所バンドがグラミー賞ノミネート。その不思議な音楽の秘密とは

加藤広大 加藤広大


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出典:zomba prison project/bandcamp.com

今年もグラミー賞の季節がやって来ました(これが公開される頃は、すでに結果が出ていることかと思います)。その中の「最優秀ワールドミュージック・アルバム部門」にてノミネートされた、とあるバンドが、なぜかNHKをはじめとする各種媒体で紹介され、妙な注目を集めています。

そのバンドの名は、「ゾンバ・プリズン・プロジェクト」

その名の通り、アフリカ南部のマラウイにある刑務所「ゾンバ刑務所」の囚人と看守で結成されたバンドプロジェクトで、もともとは更生プログラムの一貫だったのですがアメリカの音楽プロデューサー、イアンブレナンの目にとまり、アルバム『I Have No Everything Here(アイハブノーエブリシングヒア)』がレコーディングされ、今回のグラミーノミネートとなったわけです。

不良が川で溺れている猫を助けているのを見ると、そのギャップからやたら好感度が上がる。というクリシェは古くから存在します。ゾンバ・プリズン・プロジェクトも、その例に漏れずイロモノ故のノミネートで、どうせ犯罪者(囚人)がバンドをやっているという付加価値のようなものやストーリー性が話題で、肝心の楽曲は別に……とか思いながら試聴してみたところ、これがなかなかどうして興味深く、素晴らしい音楽でしたので、紹介を交えながらいろいろと考えてみようという次第です。

百聞は一聴に如かず。ということで、まずは監獄バンド件のアルバム『I Have No Everything Here』より、冗談のようなタイトルの『Please, Don’t Kill My Child』をお聴きください。

ZOMBA PRISON PROJECT『Please, Don’t Kill My Child』

Reference:YouTube

決して上手いとは言えないド下手糞な、3日3晩茹でた後にしばらく放置した弦を張ったようなギターに、震えるように乗る「人生」みたいな歌声のボーカル。しかし、そのある意味上手い下手を超越したネクストレベルな仕事に一発で持っていかれます。何より驚くべきは、てっきり「アフリカなので、おそらく伝統音楽のようなモノを演奏しているのだろう」と考えていたら、思いっきりアメリカのシンガー・ソングライターが作成しそうなロック、フォークを演っていたということです。

その刑務所で生まれた音楽は、ボブ・ディラン、デイヴ・ヴァン・ロンク、ニーナ・シモンなどの影響を彷彿とさせます。上に掲げた曲を聴いて一番最初に思い出したのは、デイブ・ヴァン・ロンクの『Hang me, Oh Hang Me』でした。

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