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「いただきます」って誰に言う? ~日本人とキリスト教の宗教観~

トゥルーテル美紗子 トゥルーテル美紗子


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こぼさないように、残さないように、いただきます。

大抵の日本人は、「ご飯の前は『いただきます』」と教わって今日まで過ごしてきたことと思います。この「いただきます」を、あなたは誰に向けて発していますか。

真っ先に浮かぶのは、ご飯を作ってくれた人の顔。優しいお母さん、愛する旦那さん。あるいは食堂のおかみさん、レストランのシェフ。でも、自分でご飯を作ったときも「いただきます」は言いますよね。誰が作ったのか分からないデパ地下の惣菜やコンビニのお弁当を口にするときも、声に出すなり心の中で唱えるなり、「いただきます」と言いませんか。

そのとき私たちの胸をよぎるのは、お米を作ってくれた農家の人、お弁当を運んでくれたトラックの運転手さん、卵を差し出してくれた鶏、犠牲になってくれた牛――そういう人や動物たちではないでしょうか。

キリスト教徒の「いただきます」は、シェフのためでも牛のためでもない

「『いただきます』は日本独自の挨拶だ」と言われますが、キリスト教の人たちも似たような習慣を持っています。食前のお祈りです。ただ、彼らは私たちとは違うものに「いただきます」を言っています。お祈りの文句を見ると、それがよく分かります。宗派によって違ってきますが、以下はカトリックのお祈りです。

Bless us Oh Lord, and these thy gifts, which we are about to receive, from thy bounty, through Christ, Our Lord. Amen.
父よ、あなたのいつくしみに感謝してこの食事をいただきます。
ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心と体を支える糧としてください。
わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。

日本訳だとちょっぴり分かりにくくなってしまうのですが、「thy gifts:あなたからの贈り物」「thy bounty:あなたのいつくしみ」という単語が示すように、カトリックの人々は「神様にご飯をいただいている」と思っています。つまり彼らは、神様に「いただきます」と言っているのですね。
※thyは古語で「your:あなたの」の意

夫がカトリック、妻の私は純日本人という我が家では、食事の前にこのお祈りと「いただきます」、両方を唱えます。夫はきっと「神様、このチキンを生み出してくださりありがとう、チキンを賄えるだけの仕事に就かせてれてありがとう」などと思っているでしょうし、私は「鶏よありがとう、鶏を加工してくれた人よありがとう」という気持ちで食事に臨みます。

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