エピローグ
翌年、男は渡米すると、シリコンバレーで起業する。
男の会社はめきめきと業績をのばし、やがて、グーグル、フェイスブックに続く巨大企業へと成長する。米経済誌『フォーブス』は、若くして億万長者となった男として、マーク・ザッカーバーグとともに彼を紹介する。その経営には独裁との批判もあるが、強烈なカリスマは多数の信者を生んでいるらしい。かつてスタバ茶漬けを飲み干した男は、みごとに成功をおさめたのだ。
やがて、男の名声が京都まで届く時がくる。
スタバ店員がニュースで男の成功を知るのである。あのとき自分のイヤミをねじふせた男が、アメリカで大成功をおさめている。時の人となっている。これはイヤミの完全敗北だろうか? そうではない。京都人のプライドの高さをナメてはいけない。店員は笑いながら、同僚にひとこと言うだけである。
「あの人、えらい成功しはったみたいやなあ、田舎のほうで」