さて。不満たらたらだったわたしにも、当時、気になる女子がいた。八重歯の可愛いノンケのTちゃんである。アプローチをする勇気もなく、挙動不審な友人としてただ彼女の周囲をうろついていた。Tちゃんは当時、カスのような男に片思いをしていた。話を聞く限り、本当にカスのような男だった。わたしは「もしかしてTちゃんはあの男を愛することで
告白した。ふられた。
2秒でふられたという事実を、すぐには受け止めることができなかった。フィクションだと思った。そう、きっとこれはサイエンス・フィクションだ。時空のひずみが生じているのだ。Tちゃんにふられた? はは。そんなことがあるはずがない。かのシュレーディンガーも、「箱を開けるまでは猫が生きているか死んでいるか決定しない」と言っていたではないか(※参考:Wikipedia)。猫は死んでいるけど生きている。同様に、わたしはふられたけど、ふられていない。数日後、今までと変わらぬ笑顔で声を掛けてきた彼女の様子を見て、わたしは確信した。ほら、やっぱり。ふられてない。