「それで、僕は何をすればいいんですか?」
「そこのドリルで歯を削る」
「えっ、それ痛くないですか?」
「痛い。だから麻酔というのをしてもらう。歯ぐきに注射する」
「えっ、それはそれで痛くないですか!?」
「まあそれも痛いんだけど、麻酔をすれば削られるときは痛くないから」
「でも麻酔の時点で痛いならあんま意味なくないですか?」
「いやそうなんだけど、いつも歯医者だとそうされてるんで、そうしてくださいよ」
「あなたが望むならしてもいいですけど、本当に納得できてるんですか? 痛くないために痛いことをするってなんかおかしくないですか? 痛みをなくすために別の痛みを感じるって矛盾してませんか? そこはごまかしながらやってきたんですか? 過去に疑問に思ったことはないんですか?」
「ああもう、うるさいな!」
私は説明をあきらめる。歯どころか胃まで痛くなる。
ちなみに医者の隣では、助手の女が謎の器具をふしぎそうに見ている。おまえもイップスか。
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