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都会的なセンスのオシャレな怪談を書いてみた

上田啓太 上田啓太


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幽霊の性格は暗すぎる。

そんな嘆きでこの文章を始めてみたい。あるいは私が怪談に飽きただけだろうか? しかし幽霊の暗さは目に余る。どいつもこいつも口を開けばうらめしいだとか、現世に未練があるだとか、あいつだけは許さないだとか、湿っぽいことを言っている。また黒髪か。また白装束か。また血まみれか。また井戸から出てきたのか。また皿の枚数を数えているのか!

私が読みたいのはオシャレな怪談である。都会的な乾いたセンスで表現された怪談である。「現代人の孤独を乾いたタッチで表現した」とか評されるたぐいの怪談である。この記事は、そのためのひとつの試みである。

皿屋敷と都会的センスの融合

ここでは『皿屋敷』を下敷きにしてみたい。女の幽霊が夜になるたびに皿の枚数を数えている。この女は昔、家宝の皿を割った咎で殺され、井戸に投げ込まれたのである。有名な話である。これをベースに、都会的な乾いたセンスを融合させればいい。

まず私と幽霊の出会いだが、ある夜、ジョギングをしている最中、私は彼女が皿を数えている姿を見かける。しかしわざとらしく驚いたりはしない。儀礼的無関心。都市においては、人々はひとつのマナーとして、お互いに興味のないふりをするのである。

だから最初の二日間、私は幽霊が皿の枚数を数えていることに気づいても、何も言わずに通りすぎる。そして彼女もまた、私にはとくに興味がないかのようなそぶりで皿を数え続ける。しかし三度目の夜、私は彼女に声をかける。そのとき彼女は皿を放置したまま、夜の景色を見つめていたからだ。

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