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子どもと写真はウソをつかない【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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それを聞いた息子が「なあに~」とやって来た。面白そうなものがあると思ったのだろう。そこで、最新の証明写真と4年前のものと2枚を並べ、聞いてみた。

(半年前の写真を指差し)この写真の人、だーれだ?

ママー!

正解っ! じゃあ(4年前の写真を指差し)この人だーれだ?

お分かりいただけるだろうか。私は、かなり軽いノリで、この質問を息子にぶつけたのだ。ママっぽいけれど、ちょっと髪型やメイクが違う。いや、しかしこの人はまぎれもなく自分の親だ。そんな思考が彼の脳内を一瞬駆け巡った後、「ママ」と正解が発せられることを想定して、である。

ところが、どうだ。

ん~。(沈黙)

(おいおい、しまった、黙っちゃったよ)

 (まだ沈黙)

 (そろそろわかるよね?)

 (まだまだ沈黙)

 (え、本当に分からないの!?)

・・・わからないや~。

 (絶句)

子どもというのは素直で、時にその素直さが残酷である。つい30秒前、ちょっと面白そうだと写真を提示し、息子に質問した自分は、実に軽率であった。長い沈黙と、「わからない」という答えに、鈍くも深い衝撃を受けたことは間違いない。ごーん、と、銅鑼の音が聞こえてきた気がした。

4年の月日を侮るなかれ。着ていたヨレヨレのパーカーを脱ぎ、どこにいくでもないけれどよそ行きの白いセーターに着替えてしまった。がんばれ、自分。

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