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「ハッパGoGo」大統領極秘指令の3つのすごいところ

さかかな さかかな


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あなたは7月21日の参議院選挙に行きましたか? え? 行ってないって?

となると、先日の参院選の結果「大麻合法化」が起案されてしまったのもご存じないですよね?

・ ・ ・

というのは、ウソですが。

けれど、そんな日がいつか日本にも訪れるかもしれません。大麻=マリファナ、俗に「ハッパ」と呼ばれている麻薬は世界的に解禁される兆しがあるのです。

2013年にウルグアイで世界初の大麻合法化、2019年6月にカナダでも娯楽用大麻が解禁されました。

大麻に対して肯定的な発言をすると「え? 麻薬でしょ?」と言われがちですが、実は大麻には医療用のものや無毒な大麻もあります。

え? またウソかって? 

いいえ、これは事実です。

本コラムでは、そんな大麻を国として容認しているウルグアイで作られた「ハッパGoGo 大統領極秘指令」(原題:Get the Weed)の話をしましょう。

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出典:映画.com

タイトルどうした?!

っていう感じですが、これは絶対ノリで「マッハGoGo」にかけているでしょ。邦訳決めた人たちクレイジーだぜ。

え? いやいや、褒めてますよ?

このタイトルの自由さに負けないくらいに

物語もどうした?!

という展開で進みます。それがこの映画の見どころなのですが、その大半がウルグアイの実際の国政事情であり「事実に基づいている」という点がこの映画の面白いところです。

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主人公であるアルフレドは母親タルマと小さな薬局を2人で営んでいます。そんな折に……

国「マリファナ合法化!」

ア「あ! いいこと考えた!」

ア(あれ……? 大麻……? まあいいか……)

ア「マリファナ入りリブラウニー完成!」

大  ★ 人 ★ 気

ア「超売れた! やった~~~!」

国「君。それ密輸品。密輸ダメよ」

牢獄ガッシャーン

国「合法化したけど、うち大麻なかったわ」

国「ちょっと君。大麻アメリカから取ってきてよ」

ア「まじすか」

\大統領登場/

大「褒美にかぼちゃやるから」

ア「親愛なる大統領のためなら!」

 

って、そんなことあるかい!

と言いたくなるような、まるで4コマ漫画のような展開です。

本作はオチから始まる映画なのですが、「大麻合法化をしたにもかかわらず、ウルグアイ国内で大麻が不足していた」ことは事実だというのです。

他にも、「世界で一番貧しい大統領」と言われているウルグアイ前大統領であるムヒカ大統領を表現するために褒美がかぼちゃだったり、「麻薬は南(の国々)からくる」というアメリカの主張に対する皮肉など、ツッコミどころ満載です。

ウソのような事実を映画化した「ハッパGoGo 大統領極秘指令」の3つのすごいところについて話していきましょう。

 

1.ウソ企画をYouTubeに投稿したら映画化される時流感

ぶっ飛び設定の「ハッパGoGo 大統領極秘指令」が制作されたきっかけは、

「大麻入りブラウニー販売!」

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出典:映画.com

というウソ企画がYouTubeで100万再生されたこと

なんだそうです。国が大麻合法化を可決するかを議案し、国民の意見も半々に分かれていたときに監督であるブッレクナーが友人たちと企てて、動画をアップロード。

またたく間に100万再生になり、多くの人が大麻合法化に関心があることを実感し、映画化したというのです。そのため、この映画には監督が3人います。また主人公アルフレドをブレックナー監督が演じじているそう。

ラテン的なノリでセンセーショナルな映画がつくられるウルグアイは、一体どんな国なのでしょうか。

 

サッカー大国ウルグアイ

ウルグアイといえば、2019年コパ・アメリカで行われた日本対ウルグアイ戦が記憶に新しい人もいるのではないでしょうか。

ウルグアイはワールドカップが初めて開催された国であり、第一回ワールドカップ優勝国でもあります。 現在はオスカル・タバレス率いるチームで、フォワードのルイス・アルベルト・スアレスが有名です。

(この2人のことは本作でも「ウルグアイを代表するサッカー選手は?」という会話で出てきます。)

ウルグアイ映画の制作本数は年10本!

サッカーで有名なウルグアイですが、「ブラジルとアルゼンチンがクシャミをすると、ウルグアイが風邪をひく」なんていう諺があるほど、近隣国に影響される南米で2番目に小さい国(面積は四国程度、人口は横浜市より少し少ない約340万人)です。

ウルグアイの映画産業は、あまり芳しくありません。

年間で10本程度しか国内映画は公開されず、国産映画の興行シェアは1.3%。

2005年時点ではウルグアイ産映画は、通算60本もないと言われていました。一方、映画入場客数は少なくないので、市民に映画文化は根付いているようです。

どうやら、映画制作をしたい人は言語が同じで地続きの国である隣国アルゼンチンに行ってしまう人が多いんだとか。

クリエイターの流出という点では、日本以上に厳しい状況なのかもしれません。

年間10本たらずしか制作製作されない国産映画のうちの1本がYouTube発という事実もウソのような本当の話です。

2.ウルグアイ前大統領が友情出演してるってほんと?

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主人公アルフレドの母親役タルマは、ブレックナー監督の実母なんだそう。

え、そんなのあり??

YouTubeで動画がヒットしたから、実の母親を巻き込んで映画化。 いやはや、俳優陣のド素人さよ。

けれどそれは「大統領極秘指令」であるからにはスーパースターは登場できないから、あえての配役なのだそう。

もっとも、数少ないキャストの一人は有名人だ。それが、大麻合法化を可決させたムヒカ前大統領だ。

前大統領が友情出演?

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出典:映画.com

意味がわからないwww

ムヒカ大統領役にムヒカ前大統領本人が起用されているのである。日本で言えば、小泉純一郎が小泉純一郎役として郵政民営化をテーマにした映画に出演するようなものです。(関係ないけどそんな映画があれば主演は息子孝太郎で共演してほしい。)

大麻合法化を世界で初めて国で行ったムヒカ前大統領。素人制作の映画に出演するフランクさを持っていますが、センセーショナルな国家法案をいくつも立ち上げた人物でもあります。

・人工妊娠中絶合法化(2012)
・同性婚合法化(2013)
・大麻合法化(2013)

世界的な問題に取り組み、2009年に大統領に就任して以来彼の支持率は50パーセント台を維持していたんだそう。

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出典:映画.com

ムヒカ前大統領は、エンドロールに映し出される監督たちとのオフショットの会話の中で「なぜ出演してくれたのか」という彼らの質問に「我々には、日々の生活の中にユーモアが必要だから」と答えます。

彼のいうユーモアとは「映画を観た人が幸せになる」もの。 映画というメディアを使い、どんなメッセージを届け、その人をどう変化させるのか。

資本主義がいき過ぎていないラテンアメリカ特有の空気感が生み出す「ユーモア」に満たされたこの映画は、素人くささは拭えないが「表現者としての純度が高い映像作品」であると言えるでしょう。

 

3.実在する大麻イベントの映像から見えるリアルな温度感

「ハッパGoGo 大統領極秘指令」の特徴は「事実」と「ウソ」のあいまいさにあります。

「大麻が合法化されたのに、国内に大麻がない」というウソのような事実が映画の舞台設定になりました。そして「大統領から与えられた極秘指令」というウソが物語を動かしてゆきます。

監督たちは物語の設定に事実とウソを周到に配置していきます。

任務中に主人公たちが訪れた「420ラリー」や「カンナビス・カップ」は、マリファナが合法化されたアメリカ・コロラド州で実際にあるイベントです。

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出典:映画.com 

アメリカでは州単位でマリファナを合法化しており、「420ラリー」はコロラド州の公園で行なう合法麻薬パーティで5万人が参加します。

「カンナビス・カップ」は大麻の品評会のこと。

映画には、タルマが420ラリーで大麻合法化されたウルグアイか来米したことをスピーチし、大衆が熱狂に包まれる瞬間があります。

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出典:映画.com

このシーンは実際にスピーチをして撮影したのだそう。映画に映されたあのマリファナへの渇愛は事実なのです。

世界的に大麻=マリファナ解禁の流れがきてる……!?

日本では大麻取締法で禁止されている大麻。

「そもそも大麻を合法化とは一体どういうことなの?」と素朴な疑問が生まれますが、世界的には解禁の流れがあります。

つい最近2019年6月に娯楽用大麻が解禁されたカナダでは、マリファナビールが開発中なんだとか。

国が大麻の規制緩和をする理由はいくつかあります。

・取り締まる人件費=税金が惜しい
・裁くための人件費=税金が惜しい

それならば、

・購入時に課税にして収益化
・観光産業にして収益化
・国の管轄下にし闇市場を撲滅する

という意図があるようです。 国で大麻を管理し、生産、販売まで行っているのです。

日本人にとって大麻は身近な植物だった

少し余談ですが、大麻は日本では古来から人々に慣れ親しまれた農作物でした。

大麻には「薬用型」「中間型」「繊維型」の3種類があります。 薬用型は俗にいう麻薬で、向精神作用をもたらす成分が花穂や葉に含まれています。

繊維型には向精神作用はなく、中間型はその作用が少ないのものを指します。日本に昔からある繊維型の大麻は布などの生活用品や神聖な神事にも使われていました。

また、大麻の成長の早さや真っ直ぐな植物であること、女性は大麻布を一人で織れることが一人の女性として認められていたことから男女問わず「拓麻」「麻耶」「麻衣」などの人名に「麻」の字が使われています。

しかし、第二次世界大戦後の昭和23年、GHQによって大麻規制取締法が制定され禁止されます。

そこから、日本人にとって「大麻=マリファナ=絶対にいけないもの」という図式ができてしまったのでしょう。

 

事実とウソの境目がない社会実験的な映画

ムヒカ前大統領は大麻合法化を「社会実験である」と言いました。この映画はまるで作品そのものが、現代社会における実験的な映像作品です。

大麻=麻薬は事実です。

しかし、半分はウソです。

ウソというと語弊があるかもしれません。私たち日本人は大麻について「知らない」というのが正しいのでしょう。

まるで4コマ漫画のオチから始まった物語ですが「ハッパGoGo 大統領極秘指令」にドタバタコメディーを期待すると裏切られます。

物語はドキュメンタリー調で、淡々と物語は進みます。映画制作のノウハウがない素人たちが作った映像であるため、ドキュメンタリー映画にしては詰めが甘い。

商業映画としての未熟さを感じます。

けれど、彼らは映画を通じて問題提起したいものを常に考えながら、自分たちが観たいものを撮ったに違いありません。

多くの関係機関、合法化を推進の第一人者である前大統領の協力を得ながら作られた映画は、単調ではありますが決して退屈ではなかったです。

私は、この映画から自由さを感じることができます。

その「自由」な表現には、人を幸せにする「ユーモア」はあるかというメッセージを感じ取らずにはいられない映画でした。

 

参考文献
「大麻という農作物 日本の営みを支えてきた植物とその危機」大麻博物館著
「大麻入門」 長吉秀夫
「大麻ヒステリー思考停止になる日本人」武田邦彦
「ハッパGoGo大統領極秘指令」公式パンフレット


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