• MV_1120x330
  • MV_1120x330
  • MV_1120x330
  • MV_1120x330

地味に深い「神と共に 第二章:因と縁」に隠された暗号

mame mame


LoadingMY CLIP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

韓国のウェブ漫画が原作の映画「神と共に」。<第一章:罪と罰>に続いて、6月に<第二章:因と縁>が公開されました。最新のコンピュータ・グラフィックを駆使した迫力のVFX、スタイリッシュなアクションで魅せた<第一章>から一転、<第二章>は役者の演技で魅せてくれます。

 

「<第一章>の映画を観てないのに、<第二章>から観てもついていける?」

そんな不安をお持ちの方のために、<第二章>の前に短いダイジェストが上映されます。“閻魔大王”や“三途の川”といった日本でも馴染みのある言葉が使われているので、外国映画といってもとっつきにくいとは感じないと思います。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BOTU5OTlmYzYtZmIzNi00OGMwLWE1MDItZDg4ZDg4N2MwMmZlXkEyXkFqcGdeQXVyNTUxNTI3MzY@._V1_SX1777_CR0,0,1777,744_AL_.jpg
出典:IMDb 三途の川を船で渡れるのは特別待遇の“貴人”のみ

<第一章>が物語世界を立ち上げ、地獄を紹介する“動”のパートだとすると、<第二章>は登場人物の過去と謎が明らかになる“静”のパートです。派手なパフォーマンスがない分、地味にみえますが、味わい深いシーンがいっぱい。そこで今回は、この映画を10倍楽しむ方法をご紹介したいと思います。

ポイントは、
・地獄の構造:原作の改変と裁判映画
・韓国語の妙:呼称とハングルの暗号
・閻魔大王:役割と韓国式ちょんまげ
・小道具:リベンジとノスタルジー
この4点です。

 

あらすじ紹介

まずは、映画のあらすじを紹介します。

<共通ルール>

亡くなった人間は49日間に冥界で7つの裁判を受けなければなりません。殺人・怠惰・ウソ・不義・裏切り・暴力・天倫のすべての裁判を無罪で通過した者だけが、生まれ変わることができます。一方、冥界の使者は、1000年間で49人の亡者を転生させれば、自分たちも新しい生を得ることができます。

 

<第一章:罪と罰>


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BZTk5MjE3ODAtZmZhMC00NWI5LThhZDItMGFlMTRjNDRhNjYzXkEyXkFqcGdeQXVyNzI1NzMxNzM@._V1_SY1000_CR0,0,701,1000_AL_.jpg
出典:IMDb

消防士のジャホンは、消火活動中の事故で死亡。迎えに来た「冥界の使者」カンニム・ヘウォンメク・ドクチュンに弁護されて裁判を受けることになります。19年ぶりの貴人(正直者で働き者のめっちゃいい人)として転生を確実視されていましたが、裁判が進むにつれて地獄鬼や怨霊が出現し、冥界が揺らぎはじめます。そして、彼の「罪」が明らかになっていきます。

 

<第二章:因と縁>


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BZDQ0YTE2ZTItN2MwZC00ZjVkLTgwOTEtYTczMTRkNTJmMDMzXkEyXkFqcGdeQXVyNzQzNDM3NTI@._V1_SY1000_CR0,0,698,1000_AL_.jpg
出典:IMDb

今回の亡者は、ジャホンの弟スホンです。怨霊として大暴れした過去があるスホンは本来、消滅させなければなりませんが、閻魔大王はある条件と引き換えに裁判を受けることを許可します。その条件とは、老人チュンサムを冥界に連れてくること。とっくに寿命は尽きているのに、彼を守る屋敷神のソンジュが使者を追い払ってしまうのです。チームは二手に分かれ、カンニムがスホンと地獄を巡り、ヘウォンメクとドクチュンが下界に降りることにします。ソンジュ神をみつけたふたりは、1000年前、自分たちが死んだ時の使者が彼だったことを知らされます。

 

 

お楽しみポイント1 地獄の構造:原作の改変と裁判映画

死んだら地獄へ……行きたい人はいないですよね。でもどんなところなのかは、ちょっと気になりませんか? その好奇心! 裁判で格好のネタになります。

 

釈迦の死後、仏教は倫理学から宇宙論へと方向が広がり、その過程で地獄も豊かになっていったと宗教学者の梅原猛さんは書いています(『地獄の思想』中公新書)。そうして、鬼だけでなく閻魔や裁判を担当する十王が現れるようになりました。

典型的なパターンとして、死者はまず、賽の河原にたどり着き、そこで身ぐるみ剥がされて罪の重さをはかられます。その後、三途の川を渡り、地獄を巡る。これまでの描かれ方では、裁判の順番は固定だったようです。

原作ではこんな風に描かれています。
ラインマンガ画面
引用:LINEマンガ『神と一緒に』

 

漫画で見るとほのぼのとした感じですが、神代辰巳監督の映画「地獄」になるとかなり様子が変わります。わたしはこの映画を観て、「マジメに生きよう」と心に誓いました


https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/8181aubekuL._SL1378_.jpg
出典:IMDb

 

「神と共に」のキム・ヨンファ監督はこの“裁判の順序”を改変し、着ているものを脱がせる係である奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)のシーンをカット。「罪の軽い順から裁判を受ける」ことにしました。そのため、死者は死んだときの服を着たままです。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BNmI0MmE1YmMtZTE1Yy00ZmRkLWFlYzAtYzFjOWJhOWFmNGJkXkEyXkFqcGdeQXVyNTUxNTI3MzY@._V1_SX1777_CR0,0,1777,744_AL_.jpg
出典:IMDb <第一章:罪と罰>の亡者・ジャホン


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BOWExMjM4ZTktNzdkZC00NmQxLTk4MmEtOTdlODkyNGRiYTQ0XkEyXkFqcGdeQXVyMjI2MzE5OA@@._V1_.jpg
出典:IMDb <第二章:因と縁>の亡者・スホン

 

この改変は<第一章>と<第二章>を同時に撮影するという制作事情によるのかもしれません。しかしこれによって、テンポよく「物語」を進めることに成功しています。

裁判を描いた映画は、どうしてもセリフが多く、動きが少なくなってしまうんですよね。たとえば、「十二人の怒れる男」は、室内だけで話が完結します。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BNDAxOTM1Nzg2Nl5BMl5BanBnXkFtZTgwNjAwNDU5MTE@._V1_SY1000_SX1250_AL_.jpg
出典:IMDb

陪審員の対話によって多数派と少数派が入れ替わる展開と緊迫感がみどころなのですが、1本の映画でこれを7回も見せられたら、絶対疲れる。キム監督は「ア・フュー・グッドメン」が好きで参考にしたものの、「裁判だけで話を進めるのは無理だと判断した」と語っています。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BNzc5NTk2NDA1OV5BMl5BanBnXkFtZTgwOTUxOTIwMjE@._V1_SY999_SX1776_AL_.jpg
出典:IMDb

代わりに、トム・クルーズ演じるキャフィ中尉の機知にとんだ弁護方式を、カンニムにエレガントに体現させることにしたようです。


http://file.koreafilm.or.kr/still/copy/00/48/83/DSKT295109_01.jpg
出典:KMDb 中央の黒い衣装の人がカンニム。

 大胆な改変は原作者のチュ・ホミンさんも受け入れてくれたそうです。

 

 

お楽しみポイント2 韓国語の妙:呼称とハングルの暗号

カンニム・ヘウォンメク・ドクチュンの「冥界チーム」は、1000年の間、一緒に仕事をしており、チームワーク抜群です。お互いに信頼しあっている。ドラマの方法論として、信頼→不信→亀裂→破滅のお手本のような設定なので、のっけから破滅の予感が。<第二章>ではチームが二手に分かれて、話が進行するのでなおさらです。

 

下界に降りたヘウォンメクとドクチュンは、チュンサムと孫のヒョンドンを守っているソンジュ神のもとへ。カタカナが多くて混乱してきましたね。大丈夫です。いま大事なのは、ドクチュンとヒョンドンだけですから。

1000年前に18歳で亡くなったドクチュンを、数え年7歳のヒョンドンは「アジュンマ」と呼びます。


http://file.koreafilm.or.kr/still/copy/00/48/92/DSKT295461_01.jpg
出典:IMDb 右がドクチュン、真ん中がヒョンドン。どう見ても「おばさん」ではない。

 

「アジュンマ」とは日本語で「おばさん」のこと。日本語よりも活用範囲が広く、成人した女性はほぼ「アジュンマ」と呼ばれます。ただ、最近では「リアルにどこからどう見てもおばちゃん」の年代でない限り、そう呼ぶことはなくなったように感じます。「リアルにおばちゃん」の参考事例を挙げておきましょう。


https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=640x10000:format=jpg/path/sfe187c76b82d83b2/image/ice711b45295cad01/version/1484467250/image.jpg
出典:「オバチャーン」オフィシャルサイト 韓国の市場には、こんな人がいっぱい。

 ドクチュンを演じるキム・ヒャンギちゃんを初めて見たのは、韓国のTVドラマ「女王の教室」でした。いじめられっ子の小学生だった彼女がこんなに大きくなって……と、親戚のおばちゃんのような気持ちでいたのに。

「アジュンマぁ!?」

さすがにドクチュンに向かって、「アジュンマ=おばちゃん」はないでしょうと思いました。でも、もしかしてヒョンドンには、ドクチュンの本当の年齢=1018歳という、見えないものを見通す能力があるのかもしれない。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BYzE0NTZmYzItN2U2Ni00ZmI5LTlmZjEtZjQ5MzZjMmFkNjFkXkEyXkFqcGdeQXVyNzI1NzMxNzM@._V1_SX1777_CR0,0,1777,999_AL_.jpg
出典:IMDb こう見えて、1018歳です。

 「アジュンマ」と呼ばれてドクチュンも「うっ!」という顔をしますが、やさしくハングルを教えてあげたりなんかしています。

 

よく考えてみると、このシーンには大きな問題があります
(※韓国語の分かる方には、ここから少しだけネタバレがあります)

 

韓国語の文字をあらわすハングルは、1446年に朝鮮第4代国王の世宗によって創られました。ということは、ドクチュンの生前にハングルは存在していないのです。なのに、君はなぜ。

<第一章>で怠惰地獄の初江大王が「お金? money?」と言っていることから、下界の文化は冥界にも届いていると思われます。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BNmU5N2VhZDMtNjIwNy00YzUzLWFjOWQtZmFlYTQxMjhjM2QwXkEyXkFqcGdeQXVyNzI1NzMxNzM@._V1_SX1777_CR0,0,1777,999_AL_.jpg
出典:IMDb

 だからドクチュンもハングルを勉強したのかもしれませんね。亡者に教えてもらって? それってこんな感じだったのかしら。ああ、「Unchained Melody」が聴こえてくる。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BODE0ODg3ODkwOF5BMl5BanBnXkFtZTgwMzk5ODIwMjE@._V1_SY1000_CR0,0,1536,1000_AL_.jpg
出典:IMDb

面倒見のいいドクチュンですが、残念なことにヒョンドンは正しく書くことができません。ヘウォンメクが死んだのは「密言」のせいと知ったヒョンドン、「密言、悪いやつ!」とノートに書き留めます。「密言」をハングルで書くとこうなります。

暗号1

でも、ヒョンドンが書いたのはこれ。

暗号2

 

下にある記号がずれていますよね。実はこれが、チーム分裂の危機につながる暗号だったんです。こうしたハングルや漢字を分解して暗号にするトリックは、ドラマでもよく使われます。え? これが? と思った方。ネタバレしなくてよかったです。安心して映画館でご覧ください。形を覚えておくといいかもしれません。

 

 

お楽しみポイント3 閻魔大王:役割と韓国式ちょんまげ

前回のコラムで、「閻魔大王とは、人の名前ではなく、役職名です。使者も、見どころのある(?)亡者の中からスカウトされるそうなので、彼らが使者となった理由も明かされるのかもしれません」と書いたら、本当にその通りの展開になって、そしてあまりの因果に映画館で震えておりました。

 

閻魔大王というと赤ら顔でもじゃもじゃのヒゲ、ギョロリと見開いた目を思い浮かべませんか?


https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/88/Enma.jpg
出典:Wikipedia

 こうした閻魔の姿かたちは中国からもたらされた「十王図」を下敷きにしているそうです。一点、日本に輸入された後に構図が変わりました。閻魔を真正面からとらえるようになったのです。その結果、閻魔は礼拝の本尊に据えられるようになりました。ただし注意するべきことがあると、『地獄めぐり』の著者・加須屋誠さんは指摘しています。

礼拝供養の場に於いて、私たちが閻魔王の姿を目にしているのではない。そうではなくて、閻魔王が私たちの姿をみつめていると感じるべきなのだ。
『地獄めぐり』加須屋誠著(講談社現代新書)

閻魔と相対するのは礼拝の場に限りません。日常も、冥界での裁判も、すべて見られています。冥界の主であり、裁判官という役割をもっているわけですから。

 

映画では、カンニムの奇策によって、亡者スホンの裁判で証人を務めることになります。たとえるならば、地方裁判所の法廷に、最高裁判所の裁判官が呼ばれるようなものでしょうか。いや、法務大臣かも。

不愉快極まりない表情の閻魔大王は、髪をおろした超ロン毛姿を披露。


http://file.koreafilm.or.kr/still/copy/00/48/83/DSKT295117_01.jpg
出典:KMDb 「友情出演」なのに出ずっぱりのイ・ジョンジェ。

法廷でお仕事していた時は髪を結っていたのに。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BZGNjNzRlMzMtY2VkMy00ZTQ3LWIwZTgtM2MwYmJjYjdjMTQ1XkEyXkFqcGdeQXVyNzI1NzMxNzM@._V1_SX1777_CR0,0,1777,999_AL_.jpg
出典:IMDb

 なぜ、髪型を変える必要があったのでしょうか?

 

実は証人として出廷した法廷で、カンニムに詰められたロン毛の閻魔大王の瞳が、小さく揺れるシーンがあります。眉毛もピクリと動く。動揺しているのです。カンニムと目線を合わせようとしない様子に、何があったのだろうと思いながら観ていて、ラストシーンで謎が解けました。そのヒントが、閻魔大王の髪型なのです。

 

日本と同じように、韓国でも昔は髪を結ってちょんまげのようにしていました。これを“サントゥ”といいます。結婚するか、成人するまでは“サントゥ”を結うことはありません。でも、<第一章>で亡者ジャホンがダダをこね、閻魔大王が現れた際は髪をおろしたロン毛スタイルでした。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BODM1ODYzZjAtMzk3NC00MjI0LThhZmEtZTM5MWI5MzgyY2U2XkEyXkFqcGdeQXVyNzI1NzMxNzM@._V1_SX1777_CR0,0,1777,999_AL_.jpg
出典:IMDb

 昔はお風呂に入る時以外で髪をおろすことはなかったそうなのですが、冥界では、

仕事中=“サントゥ”
プライベート=ロン毛

でヘアスタイルを分ける設定のようです。ロン毛はプライベートタイムの目印。そして閻魔大王とは、人の名前ではなく、役職名。つまり、彼にも「人間」として生きた時代があったのです。瞳が揺れた理由が分かった時、わたしは人間の愚かさに涙が出ました。

閻魔大王を演じる名優イ・ジョンジェによるほんの一瞬の演技。見逃さないようにしてくださいね。

 

 

お楽しみポイント4 小道具:リベンジとノスタルジー

わたしは物語を読むのが好きで、映画を観るときもストーリーの構造に注目しています。それを補完する役者の演技や小道具もおもしろい。

演技の方に目を向けてみると、「神と共に」には、韓国映画界の重鎮がちょい役で多数出演しています。そんな中で鳥肌ものの演技をみせてくれたのが、EXOのD.O.ことギョンスくんでした。おかげで湧き上がる<第三章>への期待。ですが、彼は7月1日に入隊したため、次回作は早くても3年後でしょうね……。それまでには映画の技術も進化しているでしょうから、よりパワーアップした映像が可能かもしれません。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BZGMwNDRmMDctMTgxMi00YTI5LWEzYzItNDRjZDRiNjI0OTZkXkEyXkFqcGdeQXVyNTUxNTI3MzY@._V1_SX1777_CR0,0,1777,744_AL_.jpg
出典:IMDb 演技がすばらしかった。今後の活躍に期待大。

 

小道具の方で一番「ああっ!」と思ったのは、ゴリラのぬいぐるみでした。自分を捕えに来た使者ふたりを前にソンジュ神が寝そべるソファには、ゴリラの大きなぬいぐるみがあります。これは、キム監督のリベンジの象徴だと思います。


http://file.koreafilm.or.kr/still/copy/00/48/83/DSKT295115_01.jpg
出典:IMDb すみっこにゴリラの足だけ見えています。

キム監督は、韓中合作映画「ミスターGo!」のために視覚効果を扱うVFXの会社「デクスター・デジタル」を設立しています。弱小野球チームに加入したゴリラが大活躍するという奇想天外な設定はもちろん、技術的にもはっきり言って“無言”になってしまう映画です。


https://m.media-amazon.com/images/M/MV5BMTg5OTA5MzAzMl5BMl5BanBnXkFtZTcwMDAwNzI3OQ@@._V1_SX1777_CR0,0,1777,900_AL_.jpg
出典:IMDb 毛並みや表情はけっこうリアルでした。

興行的にも惨敗したわけですが、それでもめげずに技術を磨き、完成させたのが「神と共に」シリーズ。ソンジュ神役のマ・ドンソクになでられるゴリラに、監督のドヤ顔が見えた気がしました。テーマパークのようなキッチュさもありますが、誰も地獄を見たことがない以上、すべてを想像力で作り上げたわけですから、そりゃドヤりたいですよね。

 

実は最近、「韓国映画にはイマイチ気が向かない」という声を聞いて、ちょっと寂しく感じています。文化的な背景は近いので、「わけがわからん!」という事態にはあまりならないかなと思うんですよね。杓子定規なお役所仕事にイライラさせられるところなど、「どこの国も一緒やな」と共感できるところも多いです。ノスタルジーを感じさせるところも。

 

たとえば、<第二章>で、ソンジュ神は、赤いラジカセを愛用しています。本体には「GOLD STAR」の文字がみえる。

「GOLD STAR」は、1959年に金星社から発売された、韓国初めての国産ラジオで、工業化による経済発展の希望の星だったようです。1959年は、初代大統領である李承晩政権の末期にあたります。朝鮮戦争に疲れ、政治も経済もどん底。独裁が進み、「変化」が求められていた時代の、文字通り「スター」だったんですね。

一方、この映画が韓国で封切られた2017年の前年には、大統領が弾劾訴追されるという大事件が起きています。経済面では、長期低成長基調に本格進入するだろうと予測されていました。そのため庶民は株や不動産投資などに手を出すようになったそう。

そこに映し出される「GOLD STAR」の赤いラジカセ。

カセットテープで再生される曲は、チョー・ヨンピルの「回り回る人生」です(歌っているのはシム・シン)。日本で「ALWAYS 三丁目の夕日」を観て昭和ノスタルジーにひたる人がいるように、韓国でも赤いラジカセとこの曲に、かつての希望を思い出した人がいるのだと思います。これも、キム監督が映画にこめた暗号=メッセージなのかもしれません。

 

 

上半期No.1映画には、一番のお気に入りを

豆好き・チョコ好き・あんこ好きとして、コラムでは毎回「映画の友」をご紹介しています。この映画がわたし的に上半期No.1だったこともあって、「映画の友」も一番のお気に入りをご紹介します。求肥に包まれた小豆が美しい和菓子です。

求肥

 

もちっとした求肥と、さっくりした小豆の食感。見た目も涼しげで、この季節にぴったりです。毎日あんこと共に暮らしたい。小さいけれど、これも欲。

映画のタイトルにある「因と縁」は仏教の教えから来ています。「一切法は因縁生なり」という『大乗入楞伽経』の言葉を、禅僧で芥川賞作家でもある玄侑宗久さんはこんな風に説明しています。

仏教は物事が起こるメカニズムを「因果」と「縁起」で考えます。「因果」とは「原因」と「結果」という関係で見る考え方。(中略)「縁起」は、あらゆる物事の網目のような関係性の中で、思いもよらないことが生起すると考える。
『禅とジブリ』鈴木敏夫著(淡交社)

「人」は人との「間(関係)」に生きてこそ、「人間」となります。その「間」という関係と網目の中に、愛情が生まれたり、嫉妬があったり、喜びがあったり、いさかいが起きたり。「神と共に」は、そんな人間の「因」と「縁」、そしてダークサイドをエンタテイメントに仕上げた作品です。

最先端の技術によってスクリーンに映し出される地獄の風景。でも、そこで繰り広げられるのは今も昔も変わらない人間の業です。技術に感心されるよりも、ドラマに感動してもらう方が、キム監督には本望でしょう。ここに書いた暗号やラストシーンは、ぜひ劇場で確認してください。

自分の気持ちを言葉にする勇気が持てず、償いに生きる人の地獄。わたしは今も涙が出てしまいます。

 

Special thanks:霜田明寛さん(@akismd)


このコラムについてみんなで語り合えるオンラインコミュニティ「街クリ映画部」会員募集中です。また、コラムの新着情報をオリジナルの編集後記とともにLINE@で無料配信中です。こちらから「友だち追加」をお願い致します。

[イラスト]ダニエル

街角のクリエイティブ ロゴ



  • このエントリーをはてなブックマークに追加


TOP