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「探偵なふたり リターンズ」で実感。疲れた日はコメディを観よう

mame mame


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マッチョを誇っていたはずのイケメン俳優クォン・サンウが、“伊東四朗”になっていたオドロキを、どう表現すればいいのかわかりません。

25歳でデビューし、“涙の帝王”と呼ばれたはにかみ屋の青年も、すでに40代。演技の幅におどろきを通り越して、素直に感動して笑ってしまったのが、映画「探偵なふたり リターンズ」です。

あの韓流スターが“イクメン”に!? と話題になった、1作目の「探偵なふたり」(以降、<ザ・ビギニング>と表記)が日本で公開されたのは、2016年のこと。そして今年2019年に、続編となる「探偵なふたり リターンズ」(以降、<リターンズ>と表記)が公開されました。

 

クォン・サンウが演じているのは“ヘタレの推理オタク”です。

相棒は、“昭和のガンコ親父”という表現がぴったりきてしまうソン・ドンイル。彼が演じているテスは人食いザメと恐れられる刑事ですが、家庭では妻の尻に敷かれています。

恐妻家つながりでコンビを組んだふたりのところに、今回はイ・グァンス演じるヨチという“勘違いメカオタク”が加わります。

お気楽に観られるコメディ映画、ではありますが、日本の喜劇役者である伊東四朗さんは、著書『俺の三波伸介』の中で、“笑い”についてこんな風に語っています。

コントは瞬発力や反射神経が必要だし、緩慢に動いてたらお客さんは見てくれない

伊東四朗『俺の三波伸介』より

俺の三波伸介

 

もちろん、映画はコントとは違いますが、今回、コンビがトリオとなったおかげで、笑いを生み出すリズムがよくなり、世代の違いがより鮮明になった<リターンズ>。せっかくなので映画から透けてみえる現代男性のジレンマと、コメディについて考えてみたいと思います。

 

3俳優にみる、韓国男子の変化

まずは、彼らの年齢を確認しておきましょう。
テスを演じるソン・ドンイルは、1967年生まれの今年52歳。



出典:IMDb 画像の真ん中の白文字は「プロらしく」

 

デマンを演じるクォン・サンウは、1976年生まれの今年43歳。



出典:IMDb 画像の真ん中の白文字は「オタクらしく」

 

そして、今回から参加しているヨチ役のイ・グァンスは、1985年生まれの今年34歳。



出典:IMDb 画像の真ん中の白文字は「天才らしく」

3人の俳優は、見事に9歳差で揃っているんです(映画では、実年齢よりかなりサバをよんだ設定になってしまっています)。

韓国における現50代は、ベビーブーム世代であり、時代を動かしてきた世代です。その分、モーレツ仕事人間タイプが多い。

映画の中で、酔っ払ったテスが「家に居場所がないんだよぉ」と泣くシーンがあります。だって、子どもの絵日記にはママと娘たちしか登場せず、父である自分の姿がない! 妻からはガミガミ怒られ、子どもたちにはバカにされる日々。ですが、一歩外に出ると、警察界のレジェンドであり、人食いザメと呼ばれるほどの鬼刑事となるのです。

一方、クォン・サンウ演じるデマンは、文句を言いながらも家事や子守りをこなしています。ちなみに、韓国の働くママによる“ワンオペ育児”率は、30.6%(韓国の求人サイト「jobkorea」の調査より)。日本では2人に1人が“ワンオペ”といわれているので、男性の育児参加率は日本の方が低いのかも!?

 

クォン・サンウは抱っこ紐姿もさまになるくらいのイクメンを演じています。



出典:IMDb 画像右上の白文字は「オレたち、いったいなんで、こうやって生きなきゃなんないのかな?」

 

いや、似合っていていいのだろうか?
クォン・サンウといえばマッチョの代名詞だったのに。



出典:kmdb 「青春漫画〜僕らの恋愛シナリオ〜」の、青春ど真ん中の青年

 

この変わりようは……。



出典:IMDb 「探偵なふたり ザ・ビギニング」で泣き止まない娘に癇癪を起すパパ

 

いえ、これが40代を迎えた男なのです。自分の夢を追いつつ、共稼ぎの妻の機嫌をうかがう様子はいまいち分別がなく、大人になりきれていない。それでも、テスよりは若い世代の扱い方を知っていますし、スマホだって使いこなしています。

ただ、デマンはまだ、“酸いも甘いも噛み分ける”存在ではありません。探偵事務所の経営に行き詰まった状態でも、行方不明の猫探しはやりたくないデマンと、ギャラ次第と考えるテスとの間に差があります。

そして最後に、ヨチ。サイバー捜査隊のエースだったにも関わらず、盗聴器を盗んで妻を監視し、捕まったという残念な経歴を持っています。

お金に細かく、稼いだ金は趣味につぎ込む。効率的な聞き込みの手段として、自身の男性的魅力(?)を発揮しますが、恋愛する時間があるなら、自分の才能を発揮したい様子。人生の伴侶は女性よりもハーレーを選びそうな人物です。

ガンコなアナログ人間のテスと、惑いまくりの不惑のデマン、そしてヨチの自由人的言動は、それぞれの世代を象徴しているように映るのです。



出典:IMDb

警察の中で組織人として生きてきたテスには、上の言うことを飲み込む胆力があります。ですが、“新人類”なヨチは、団体行動が苦手そう。デマンはというと、「好きを活かして差別化すればいいんだよ」なんて、なにかの本の受け売りのようなことを言っていて、口ばかり達者やん!

という、3世代の違いをサラリと描き出しているところは、脚本のうまさでしょう。上司に逆らわずに仕事をがんばれば家庭で孤立。家事にはげめば、商才のなさを責められる。あぁ、男たちよ、いったいどうするの!? そんな、コメディかと思いきや、サラリーマンとしての悲哀も詰め込んだストーリーになっているんです。

 

<ザ・ビギニング>ではお子ちゃま扱いされていた新人クンの成長や、ウン●対決は、「イクメンなんて、当たり前! ピンクのゴム手袋だってオシャレにみせてやる!」という男性陣の宣言にもみえてきます。



出典:IMDb

記事冒頭で述べた、伊東四朗さん。彼ほど、“笑い”を知っている人はいないと、わたしは思います。そんな伊東さんばりに喜劇役者としての才能をみせてくれたクォン・サンウ。おまけに、イケメンからイクメンへと進化している。

めちゃくちゃいけてるやん!!!

とはいえ、意思疎通がうまくいかない原因と言われているジェネレーションギャップにジェンダーギャップを乗り越えるのは、まだまだこれから。お互いにお互いをリスペクトすることが必要……だと思われますが、それは映画の中でもうまくいっていません。そのために生まれる笑いが、この映画の見どころのひとつです。

 

監督交代により、強化されたコメディ路線

<ザ・ビギニング>は、監督のキム・ジョンフンが600倍近い倍率のシナリオコンテストで優勝し、映画化されたものでした。ところが、<リターンズ>では監督が交代しています。この辺りの事情は、インタビューでも語られていません。

男性が主人公で、推理・アクション・サスペンスが軸という映画に起用されたのは、イ・オンヒ“女性”監督。自身はあまりユーモアのあるタイプではないとして、続編の話が来た時、「なぜ、わたしに?」と思ったのだとか(「cine21」監督インタビュー記事より)。

 

イ・オンヒ監督は、前作「女は冷たい嘘をつく」で注目を浴びた監督です。



出典:Amazon

 

「女は冷たい嘘をつく」でも、農家に嫁いだ外国人嫁への虐待や臓器売買という社会問題を取り上げていますが、今作でも社会的な問題に向き合っています。

事件の舞台となっている児童保護施設の名前「兄弟保育院」は、ここ数年、韓国内を震撼させている事件の施設と同じ名前です。「偶然そうなった」と監督は語っていますが、釜山で実際にあった事件を思い浮かべた人は多かったと思われます。

でも、監督が映画の中で描くのは事件の真相ではなく、事件に巻き込まれた“人間のドラマ”です。

妻に離婚届を突き付けられるというヤバイ状況の中でも、息子にオモチャの銃を向けられたら「う、ううぅぁ……」と倒れてみせるお茶目なデマン。一方で、悪の手が自分の家族に及んだ時には、ヘタレなりに必死に立ち向かいます(撃退するのは妻ですが)。

どちらも、ひとりの人間の中に存在する、一面。

イ監督は、推理力を駆使して悪に立ち向かうヒーローではなく、わたしたちの隣にいる“普通の人”を描きたかったことが伝わってきます。そして、その過程を“笑い”へとつなげる“リズム感”がすばらしくよかった!

コメディの演出で一番大切なことは、緩急のリズムです。積み上げては壊す。また積み上げては壊す。コメディ映画を撮るのは初めてのイ監督ですが、大げさに翻るコートやアップになった大皿での場面チェンジ、セリフ運びでリズムを作り上げることに成功しています。

ただ、怖いのは何度もリハーサルすることで慣れてしまうことです。そこでソン・ドンイルは一計を案じ、本番までは演技を秘密にしていたそうです。

촬영 순간에 처음 본 감독과 스탭들이 진짜 재밌어하는지가 궁금한 거다. 계획을 모두 알고 촬영을 시작하면 이미 알기 때문에 재미가 없는 건지, 아니면 진짜 재미가 없는 건지 구분이 힘드니까.
(撮影する時に初めて見た監督とスタッフたちが、本当におもしろがっているのか気になるのです。やることをすべて知っている状態で撮影をスタートしたら、すでに分かっているためにおもしろくないのか、もしくは本当におもしろくないのか、区別するのは難しいから)

「cine21」監督インタビュー記事より。翻訳はmame

おかげで、撮影中にひやひやすることもあったようですが、笑いのリズムは、こうした緊張感の中に生まれていたのです。

 

そして、<ザ・ビギニング>で試したキャスティングの妙。
先に、クォン・サンウといえば“マッチョの代名詞”と書きました。スター俳優を中心にした映画にするなら、そして「まだまだ若いぞ。いけてるぞ」とミドル世代にロマンを与えるなら、肉体を使ったアクションシーンはクォン・サンウが演じるはずです。

が、なんと。

 

シリーズの中で、宙吊りで銃を撃ったり犯人と格闘したりするのは、シルバーヘアのテスなんです!

 

クォン・サンウはというと、膝の怪我のために警察官採用試験に落ちたという設定のため、殴られることはあっても殴ることはありません。それが、犯人であっても、妻であっても

暗闇には怯えるし、銃声には尻餅をつくし、血を見て叫び声を上げるくらいのヘタレ。

 

自慢の筋肉はどうした!!!

 

と言いたくなってしまいますが、こうした役割の逆転も、見事に笑いを生んでいます。

監督も出演者も、こぞってシリーズ化したいと語る「探偵なふたり」。今後が楽しみになりますが、実は一点問題があるのです。

 

スター俳優を目立たないように、目立たせる監督の手腕

シリーズ化するにあたっての問題点とは、俳優の身長差です。

実は「探偵なふたり」の登場人物は、みんなデカイ!

まずは、クォン・サンウが183cmで、ソン・ドンイルは177cm。<ザ・ビギニング>では、デカイ図体のマッチョなのにヘタレというギャップがおもしろかったわけですが。ヨチ役のイ・グァンスは、さらに上をいく194cmなんです!

思えば、イ・グァンスはドラマでも気の毒な演技をさせられていました。分かりやすいのは、韓国時代劇の「トンイ」でしょう。



出典:Amazon

 

いつも一緒にいる掌楽院の先輩ファンを演じているイ・ヒドが165cmと小柄なため、常に膝をゆるめて前かがみの姿勢でいるのです。

<リターンズ>でも、3人が並ぶ全身のショットはたった1回しかありません。しかも、警察署の階段下からあおりで撮るというもの。ほとんどのシーンでグァンスは、座っているか、カウンターにもたれているか、倒れているか、です。

そうしないと、スターであるクォン・サンウを見下ろしてしまうから!

ではないかと思われます。2人が一緒に映っているシーンもありますが、遠近法をきかせたショットだったり、しゃがんでいたり。



出典:IMDb

 

やることなすこと、ちょっとボケていて楽しいのが、グァンスのお芝居なのに。サンウは「自分が目立つよりも、俳優同士の化学反応をみてほしい」と語っていますが、やっぱりほら、“大人の事情”があったんでは……と、勘ぐってしまいますよね。

シリーズ化は、身長問題をいかに乗り越えるかにかかっているのかも!?

 

コメディに導入された「刑事もの」映画へのオマージュ

今回はアングルを工夫してジレンマを乗り越えたイ・オンヒ監督。ほかにも、いくつかのシーンでは、「刑事もの」映画へのオマージュととれる場面がありました。

「刑事もの」と呼ばれる映画やドラマは、それこそ山のようにあります。犯人を追いつめる推理はもちろん、派手な撃ち合いや格闘シーンが見どころです。中でも、カーチェイスの緊迫感ははずせない!

そう、いまや「刑事もの」につきもののカーチェイスですが、通りすがりの人から車を奪って追いかけるというカーチェイスの定番をつくった映画は「フレンチコネクション」なのだそうです。しかもこの映画、街中でロケをおこない、実際に猛スピードで走って、本当に衝突しながら撮影したのだとか。



出典:IMDb

 

主人公の刑事を演じたジーン・ハックマンの表情からも、撮影時の緊張感が伝わってきますよね。



出典:IMDb

 

この映画以降、さまざまな映画やドラマでカーチェイスは繰り広げられてきました。もちろん、「探偵なふたり」でも“チェイス”シーンはあります。

<ザ・ビギニング>では、自転車。今回の<リターンズ>では、バイクです。

「ちっせ〜」

と、笑うことなかれ。
ソウル市内の道路は常に渋滞していることで有名です。普通なら10分で行けるところを、1時間かかったこともあるくらい。なので、カーチェイスは現実的に見えないのです。たぶん。

そして、この記事の中で触れた、映画の中の各要素。実は、映画の前半に登場したネタで、これがすべて後半への伏線となっています。たとえば、デマンの息子の銃。これが伏線であったことに気付いた瞬間、

「青島~っ!!!」

と叫びたくなりますよ! ぜひ、劇場で確認してくださいね。

 

今回の「映画の友」はこれだ!

豆好き・チョコ好き・あんこ好きとして、コラムでは毎回「映画の友」をご紹介しています、ということをちょうど書いていたら、西島編集長からメールが!

西島編集長「まさか豆じゃないですよね?」

mame「奈良旅行の後、葛餅にはまっておりまして、お餅でいこうかと……」

西島編集長「名前にないですよね?」

mame「そうなんですけど、葛餅がおいしくて……」

西島編集長「チョコとあんことお餅だと、語呂がよくないですよね?」

mame「そうなんですけど、葛餅がおいしくて……」

というわけで、今回は“豆”入りの「葛餅」をご紹介いたします!!!

 

くず餅

 

丹波産の黒豆が入った葛餅はもっちりプルプル。このお餅、できればヨチと一緒に味わいたい。いざという時は非常食に、有事には黒豆を取り出して武器に、と活用範囲は広いと思われます。いつでもどこでも、お餅を携帯してほしい。

そして、名前のとおり豆粒サイズのわたしとしては、お茶でも飲みながら、彼に聞いてみたいのです。

194cmから見える世界は、どんななのかしら。
 

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