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「バリー・シール/アメリカをはめた男」というよりは、はめられた男

加藤広大 加藤広大


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どちらかと言えば、「バリー・シール/アメリカにはめられた男」

本作、話の骨格は単純です。天才パイロットがCIAにスカウトされ、麻薬組織にもスカウトされる。二足のわらじを履きながら時に逮捕され、釈放され、新たな任務を与えられ、CIA、麻薬組織との関係も少しずつ変わっていきます。

話はここで再び「バリー・シール/アメリカをはめた男」という邦題に戻るのですが、基本的にバリーはハメられっ放しです。そもそも最初の取っ掛かりが、葉巻やマリファナを密輸して小遣い稼ぎをしていたことをネタにCIAにスカウトされているので、最初から力関係が出来上がっちゃってるんですね。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/10/b00dd3f45984564d0cb1f96766616933-e1508959504231.jpg出典:IMDb

つまりは「操縦能力は高いけど、いざとなったらすぐに捨てられる存在」として扱われているわけです。コカインを運ぶ時、依頼したカルテルの奴等が無事に離陸できるかできないかで賭けをはじめるシーンがあるのですが、これまた「死んでもすぐに替わりを探す」くらいの存在であることを意味しています。

CIAの仕事も、カルテルの仕事も、バリーは辞めるというわけにはいきません。CIAの仕事を辞めるならば、そのまま一生監視されるか、牢獄行きか、最悪の場合は消される可能性だってあるでしょう。カルテルの仕事ならば尚の事、家族を人質に取られたり、肉体的に追い込んで仕事を続けさせられたり、それでも無理なら、まあ殺されますよね。

なので、CIAを欺いて武器を横流ししたり、コカインを密輸したりはするのですが、それだけで「アメリカをはめた」っていうのは、ちょっと過大評価もいいところなのではないでしょうか。劇中、どう考えても最もヤバいのはアメリカであり、ぶっ飛んでるのはカルテルの面々です。

物語がはじまった瞬間から、バリーはもう錐揉きりもみ回転しながら堕ちて行く飛行機のように、運命に雁字搦がんじがらめにされてしまっています。この救いの無さは札束やコカインで若干薄められはしますが、映画に暗い影を落とし続けます。爽快感のなかに、ちょっとだけ苦味がある。ここが前述した類似映画と、一味違うところでしょうか。

そうそう、言い忘れてました。本作の原題は「American made」です。馬鹿みたいな数字で申し訳ありませんが、こちらを使った方が鑑賞後の感動が1億倍は増したことでしょう。ヤバいぞ、邦題。

ともあれ、「バリー・シール/アメリカをはめた男」は、気軽に楽しめる良作でした。数週別コラムをはさみまして、次回の映画評は「ローガン・ラッキー」です。

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