さて、本作のサウンド・トラックは大きく2つに分けることができます。ネイディーンが頭の中で鳴らしている自作のサウンド・トラックと、現実世界で流れている楽曲群です。
メインビジュアル(出典:IMDb)
彼女が何かアクションを起こすときには、ちょっと景気の良い曲が流れることが多く、その楽曲は周りの人にはほぼ聞こえていません。誰しもが聞こえる状態で、BGM的に流される音楽よりも、一貫性があるんですね。
映画は音楽を使って登場人物の心情を語らせたりしますが、この、こじらせた女子が自分で選んで頭の中で再生するサウンド・トラックというやり方は興味深いですね。これもまた、ネイディーンのキャラを立てるために一役買っています。
ここから考えてみると、『Ballroom Blitz』ひとつとっても、この元ネタ曲は映画「スーサイド・スクワッド」のトレイラー版で使われておりまして、ネイディーンがYouTubeで予告編を観て、インターネットで検索して間違ってオリジネイターではないThe Strutsのバージョンを購入してしまったっていう設定は、有り得ない話ではないですね。
Reference:YouTube
ネイディーンの脳内こじらせサウンド・トラックだけでなく、アーウィン(ヘイデン・ゼトー)が、金の匂いしかしない超豪華ブルジョワプールで『The Dickhead Song』を流すシーンも同様です。
この曲、映画用に作ったと思ってたんですが、違うんですね。Miles Bettermanというアーティストの2010年の曲でした。
Miles Bettermanは『I Hate The World』という曲も作成しておりまして、このプロモが、まさにアーウィンの創作に繋がるような映像なんです。
Reference:YouTube
こちらもネイディーンと同じく、アーウィンがある日『I Hate The World』の映像をYouTubeで見て、音源を買おうとしたらAmazonUSでもiTunesでもまさかの『The Dickhead Song』しか売っていなかったのでそちらを購入したっていう設定は、有り得ない話ではないですね。ちなみに、『The Dickhead Song』のみ販売されている話は本当です。
この選曲の後に、彼が映像制作をやっていると説明される場面に繋がるのが本当に細かい。
アーウィン(出典:IMDb)
このように、どのトラックも深読みできそうな要素がたくさんあるんですよね。無駄な曲、手を抜いた選曲がひとつもない。映画自体はこじらせ女子がアクセル全開ですが、裏の仕事は徹底して緻密に進められています。