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『海の見える理髪店』解説

門松一里 門松一里


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店主の話

元来、接客業というものは、相手の話を聞く商売です。
でもたまに、いますよね。ずっと口を開いている人・・・。

溜息をつきたくなりますが、
「私と仕事とどっちが大事なの?」
と聞く人と同じです。
自信がないのでしょうね。

賢い人というのは、沈黙を恐れないものです。

何でもそうですが、自分の事ばかり話している人間は成長しません。

多くの人が勘違いしているのですが、自分のことを話してもモテません。それはすでに興味を持たれている場合に限ります。

人と話しても、絶対に詮索しないことです。アドバイスもしてはいけません。黙って2時間聞きましょう。

その人の人生を2時間映画だと思って、静かに聞くことです。

ふつうの人の人生を、その人に語らせると長くて90分で終わりです。2時間も話せば同じことを繰り返します。それはもう一度言いたい話であり、どうしても聞いてほしい内容です。

よく「相手の立場になって考えましょう」とかあるじゃないですか。

しなくていいですよ。
だいたい人間、自分のことも解らないのに、相手のことなんて解りませんよ。

で、店主の話です。
何故か、店主は自分の話をします。もちろんそれは、〈僕〉がグラフィックデザイナーであり、店主がなりたかった絵描きの職業だからでもあります。

店主について

店主は、本人の口から「もう私、そう長くはないでしょうから」と言うようにかなり高齢です。

終戦時(昭和20年、1945年)に、旧制中学の二年でしたから当時13歳かしら。逆算すると1932年あるいは1933年生でしょう。2016年現在で、84歳か83歳です。

二回結婚して、二度とも別れています。最初はDVで奥さんは秋田の実家に帰ってしまいました。二度目はとある事情のために・・・。

最後に、店主はどうしても〈僕〉を正面から見ます。

「あの、お顔を見せていただけませんか、もう一度だけ。いえ、前髪の整え具合が気になりますもので」

嘘です。
完璧主義の店主がそんなことをするはずがありません。

店主はどうしても見たかったのでしょう。鏡越しではなく、ありのままの〈僕〉を。

街角のクリエイティブ ロゴ



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