かなり前の話ですが、広告の表現としてマンガの力を借りる機会がありました。企画をクライアントと握って、ラフから本番でどうジャンプできるかをワクワクしながら原稿を受け取って見た生原稿の迫力は、印刷された薄い紙とは違う重みがありました。今はもうデジタルでのやりとりが普通でしょうけれど。画材や入稿方法は変わっても、マンガの持つパワーは今も強力です。
マンガの見方が徐々に変わった
アートディレクターの仕事をしていく内に、見せ方を参考にすることが出てきました。たとえば顔の描き方ひとつにしても、普通のアングルではない意図を持ったアングルを見ると、裏に隠された狙いを探ってみたくなります。「なんであえてこの角度から見て、この情報量なんだろう?」とか。
「何かちょっとひっかかるな、この表現」といった、作者の工夫に気づいて発見できた時には妙な一体感を感じて、ちょっとうれしくなります。アングルや、タッチ、効果線や擬音のようなデザインに近い要素などが複雑に絡み合って、且つモノクロという限られた手法で表現されるからこそちょっとした工夫で印象が変わる、それが読後感を生むのだと思います。自分もアートディレクターとしてこんな読後感を生みたいな、と思います。
また、マンガそのモノの世間からの見方も変わってきています。以前、超有名マンガ家の弟子が独立するも伸び悩んでいた時に、師匠のたった1つのほんの小さなアドバイスでグングン売れ始めたという話をテレビで観て、「おおおぉ!」と思いました。それが冗談みたいに単純なデザイン的なアドバイスなんですよね。あと、マンガ家によってはネーム命という人がいたり、いきなりケント紙(?)に描き始める大御所をカッコ良く感じたり。最近は原稿の向こう側のマンガ家を見るコンテンツをよく目にしますね。
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