映画「ムーンライト」、監督はバリー・ジェンキンズ。
出典:IMDb
なにしろ、この映画、アメリカ・フロリダ州の物語なのですが、アフリカ系住民、つまり黒人しか出てきません。そして作ったひとたちもみなさん黒人です。それがアカデミー賞作品賞受賞というのは、昨年2016年に「アカデミー賞は白人ばかり」という「#OscarsSoWhite」というツイッターのハッシュタグまで生まれた批判を受けてのことではないか、という意見もありますが、それはうがった物の見方であり、作品を観れば、うがったというより、いやぁ〜いがったいがった、という良かった方面に僕も傾いております。えがったえがった。
こういうことを書くから「この人の映画評論は、中身は置いといて、ギャグがすべっている」と書かれるんですよね。それがどうした。すべるのがスキーや。
さて、よがったよがったと僕が書いているのは、あくまで2度観た結果です。1回目観たときは、面食らいました。知人と行ったのですが、観終わった後、顔を合わせて、「ひろのぶさん、これ、エンタメ新党で書くんやろ? どうするん?」と真顔で訊かれたくらいです。それくらい「ポカーン」でした。なぜかというと、あまりにも予備知識なしで行ったからです。「えっ? えっ?」ってなることが多すぎて、困ってしまいました。
出典:IMDb
持っていた予備知識といえば、アカデミー助演男優賞をマハーシャラ・アリが受賞したということぐらい。それすらも、実際に観てみると「えっ? えっ?」の一因でした。
物語は、マイアミにある、黒人だけが住む小さな区域の、一人の少年・シャロンの成長の物語です。
出典:IMDb
そして彼が大人になるまでを3人の俳優が年齢別に演じているのですが、それが、メインのポスターになっているんですよね。
でも、観るまではそのことにぜんぜん気がつかない。3人が別々になってるポスターを見れば、こういうことかとわけがわかります。
出典:IMDb
物語はこの3人が演じるパートでそれぞれ
1.リトル 2.シャロン 3.ブラック
とサブタイトルが付いた3部構成になっています。演じるのはそれぞれ幼年時代(アレックス・ヒバート)、少年時代(アシュトン・サンダース)、成人後(トレヴァンテ・ローズ)なんですが。観ると誰もが驚くのが、3人がひとりの人間に見えるんですよね。
リチャード・リンクレイター監督の「6才のボクが、大人になるまで。」は1人の少年を実際に大人になるまで十何年も追いかけて撮影した映画ですが、
出典:映画.com
この「ムーンライト」もまるで同じ手法で撮影したかのようです。特に共通点を感じるのは、目。あと、口の半開き具合。
出典:IMDb
出典:IMDb
出典:IMDb
主人公シャロンを演じた3人に、バリー・ジェンキンズ監督は、他の人の演技をあえて見せなかったそうです。理由は「マネするから」。シャロンという人間の内面を伝えて、心の深いところで3人がそれぞれキャラクターを理解すれば必ず似てくるということですね。