出典:IMDb
2000年代に入ってからというもの、優秀な音楽映画、ドキュメンタリー、そして音楽が重要な意味を持つ映画が数多く制作されています。そのことは前回の「素晴らしき映画音楽たち」の評でも書きましたが、また新たに音楽が大きな役割を果たしている映画が誕生しました。
その名は「ベイビー・ドライバー」。今回は本作について、いろいろと書いていくわけです。
まずは予告編を、と言いたいところなのですが、現在6分間に及ぶ圧巻の冒頭シーンが公開されております。せっかくですのでこちらをどうぞ。「最初は映画館で観たいわ」という方は、日本版ではなく本国版の予告編をご覧になるのをおすすめします。
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台詞一切なし、問答無用の圧倒的な冒頭にて、この映画の主人公はゲッタウェイ・ドライバーであり、卓越した運転技術を持ちながらも、その素行からどこかちょっと「おかしい」人間であるということ。そして何より音楽が重要なテーマであろうことが過不足無く説明されます。
この完璧な説明を成し遂げた監督は、エドガー・ライト。
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「ショーン・オブ・ザ・デッド」、「ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン!-」、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」など、コメディ映画を多く手がけており、いずれも非常にアベレージが高いという、信頼のおける監督です。
特に「ショーン・オブ・ザ・デッド」は、あくまで私見ですが「ゾンビランド」、「ドーン・オブ・ザ・デッド」と共に、2010年代のゾンビ映画の方向性をある程度決定づけた作品であり、本作でもその「ゾンビ映画感」とでも言いましょうか、血肉は充分に受け継がれています。
引用が得意な監督ですので、「お、『ザ・ドライバー』からの引用だな」、「ふふーん、これはタランティーノっぽいぞ」などと被分析性を誘発しがちなのですが、彼はカット・アップにより違う意味や新しい見方を表現できる人物であり、気の利いたユーモアの使い方は最早「エドガー・ライト風」というジャンルを設定してもバチは当たらないでしょう。
その点で「ベイビー・ドライバー」はまさにエドガー・ライトテイスト全開で、後半になるにつれてハンドルを観客の予想とは逆に切り、かつトップギアに入れてくる様は、「やっぱりエドガー・ライトはエドガー・ライトだな」とファンをニヤリと、そうでない人には「こう来たか」と思わせる力を持っています。
と、いうかですね。
今作でのエドガー・ライトの功績は、冒頭の凄まじいカーチェイスシーンを作り上げたことではなく、逃走物の新境地を開いたのでもなく、女優の使い方がまさに「ストーリーはそうでもないけど、女の子の可愛さのみで強引に持っていくゾンビ映画」であり、かつ映画はそれすらもスパイス程度に感じられるほどのクオリティで撮り切った、という凄まじさです。
最近の作品で言えば、「ゾンビワールドへようこそ」のハルストン・セイジ、「カジノ・ゾンビ」のエヴァレナ・マリーがそうですが、本作のヒロインであるデボラ(リリー・ジェームズ)も、前年に公開されたゾンビ映画「高慢と偏見とゾンビ」で美しい5人姉妹の長女役を演じていました。
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で、デボラちゃんなんですが、もう頭からつま先までキュートの化身みたいな存在で、とにかく可愛い。おそらく2010年代でこれ以上可愛いウェイトレスは出てこないでしょう。立ち居振る舞い身のこなし、表情や話し方はもちろん、制服のサイズ感も素材も色も何もかもが素敵で、完璧なファム・ファタール。
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しかもですよ、ただ可愛いだけかと思いきや、バールのようなものを握りしめてベイビーに