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【カンボジア発】街角のディザスター

笹本愛子 笹本愛子


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(出典:BACKPACKING ASIA

光と影。柔と剛。善と悪や、生と死。ハイボールと唐揚げ。お酒を飲むことと、走ること。走ることと、週末の早朝から走ってしまう自分への陶酔。賛否両論あるだろうが、存在が相依相対しているものは、世の中に数多く存在する。最近私の脳内でバズり気味の「都市」も、「農村」が無ければ存在しない概念であろう。国際連合人間居住計画が、「2050年には、世界人口の約70%、60億人以上が都市部に暮らすってよ」と危惧しているように、都市には様々なワクワクドキドキや、やばいぞこれ、が満ち溢れている。農村フェティシズムの私にとっても、都市は「好き」や「キライ」といった、単純な感情では片付けることのできない、切っても切り離せない存在だ。
 

新興が目覚ましい東南アジア諸国でも、都市化は進んでいる。シンガポールやバンコク、マニラ、ホーチミン。国の内外から興る成長のうねりを、感じずにはいられない。
 
カンボジアの首都・プノンペンも、我らが誇るべき都市である。フランスの保護国となった後19世紀後半、プノンペンが都市として形作られ始めた。現在でも、コロニアル調の建築物の前や、モニュメントを取り囲むラウンドアバウトをトゥクトゥクが走る姿は、何とも言い難い古今東西の融合を醸し出している。
 

そんな都市・プノンペンは、平凡な毎日に少し、いやちょっとやり過ぎな程の刺激を与えてくれる。
 

家を探し始めたばかりの頃、同僚からの念を押された。

「そのあたりって洪水起きないよね?」

これは東南アジアあるあるかもしれないが、このあたりでは近くに水源がなくとも洪水が起きる。かなり頻繁に、だ。プノンペンの都市計画については絶賛勉強中のため、私の想像でしかないが、突然のスコールで行き場の無くなった街中の雨水を、プノンペンは排水溝に集めるような細かいことはしない。もっと大胆にワイルドに、排水する。プノンペン自体、地形的にさほどの高低差があるわけではないが、何故か急激に低地になっているエリアが複数存在する。そのエリアでは、雨が降ると川が現れ、ちょっとした雨となれば池となり、それが数時間続くと1階に暮らしている皆さんは、もう絶望的となる。普段、自転車(といっても 比較的真面目にオフロードを走れる程のマウンテンバイク)が愛車である小生も、自宅前の道路・川を雨期の昨今渡り続けている。

 

都市・プノンペンは、水関連の話題が尽きない。プノンペンの中心部から、バイクタクシーで15分程郊外へ向かえば、もうそこにはちょっとした農業地帯が広がっている。私が住んでいる地域には湖があり、そこで空心菜などの水耕栽培が盛んに行われている。というと、素晴らしく優雅な湖畔を想像され方もいらっしゃるかもしれないが、それは全く私の願望である。農業地帯が工業地帯と隣接という、ダメ。ゼッタイ。な環境で、様々な水耕栽培が行われている。異様な程に輝く黄緑の沼で、生き生きと空心菜が育ち、その湖畔ではカンボジアおかんが洗濯に専念している。

「世の中には、知らぬべきことが幸せなこともある」論者である私は、視力が弱いにも関わらず、裸眼で生活をしている。私としたことが、ちょっと色気付いてメガネをかけて、自転車のペダルに足をかけてしまった。それが全ての間違いの始まりであった。その日以降、私は一度も空心菜を口にしていない。

 

都市・プノンペン は、交通事情もユニークである。マニラで生活していた際は、あの「ジープニー」と呼ばれる、米軍駐留時代のジープを中型バスに改良した公共交通機関には、とことんやられた。我が日本国がODAを投じてその路線図を作る程、利用方法が混乱に混乱を重ねているジープニーの使い方は、1年程暮らしても理解でできずに終わった。

一方プノンペンでは、そのような中型バスのようなものは、ほとんど見かけない。道を見渡すと、自家用車、タクシー、トゥク トゥク、バイクタクシー、それぞれがほぼ同等の割合で列をなす。一般市民にとって最も便利かつ安価な交通手段はバイクタクシーであるが、この精々数ヶ月しかプノンペンで暮らしていない私でも、思わず胸元に十字を描いてしまう場面に、既に幾度も直面している。ベトナムのようなスーパーカブ天国や、マニラやバンコクのような車社会であればまだいいが、これほど交通手段が群雄割拠していると、やはりそこで暮らす我々も、武士の如く潔い生き様を、図らずとも描いてしまう。

 

 

都市・プノンペン。私たちすぐ後ろには、危険が待ち構えている。そんな危険とも共存しながら生活を営んでいる人々 は、やはり奥深い(のか、ただ楽観主義なのかは不明であるが)。アンコールワットに人気を奪われっぱなしのプノンペンであるが、いわゆる開発途上国/新興 国の都市化を目の当たりにしたい方、是非プノンペンへお越しいただけると幸いである。

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