• MV_1120x330
  • MV_1120x330

冷静と情熱のあいだ(於カンボジア)

笹本愛子 笹本愛子


LoadingMY CLIP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アンコールワット。

ベンメリア。

メコンの川イルカ。

ラタナキリのコーヒー豆。
 
未だ日本からの直行便が就航していないにも関わらず、多くの人々を魅了する国。それは、カンボジアである。アメリカのテレビ局CNNが2015年に選定した、「世界で最も旅行したい町ベスト10」では、惜しくも我らが京都に敗れたが、アンコールワットをはじめとする遺跡群がある「シェムリアップ」が、堂々3位にランクインしている。
 
我々日本人は、「曖昧」という素晴らしき概念、英語で言うなら「Ambiguity」はたまた「Obscurity」、いや日本語文化で育ってきた貴方にしか分かり得ない、この感情を抱くことができる人種である。

しかし、私はどうやら間違っていたようだ。この美しく愛すべき国・カンボジアにも、どんなに目を細めても境目がぼやけてしまう、「どっちやねん」が存在する。

ストレンジャーと家族

東南アジアあるあるは、この国にも存在した。

人と人との距離が近すぎる。一度会えば、友達。二度会えば、バディー。三度目には、私の明日の予定まで把握している。縁もゆかりもない地で暮らす者にとって、日々ディナーに招待してもらい、しこたま地ビールを振る舞われるこの距離感は、もちろん苦しゅう無い。

恥じらいと大胆さ

カンボジア随一のビーチリゾート・シアヌークビルには、多くの人々に「今までの人生で見た中で最も美しい」と言わしめる海が広がる。スペインのイビサ島やフィリピンのボラカイ島、タイのパンガン島に、追いつけ追い越せの勢いである、このシハヌークビルである。

だがちょっと待って欲しい。ビキニのカンボジア美女たちと青い海の水しぶきは、この国では共存していない。家ですら、カンボジア伝統の布をまとった上でシャワーを浴びる。未だこの恥じらい文化は、根強く残っているようだ。

一方カンボジアの方々、特に男性陣は、あの風呂上がりのバスタオル腰巻き姿的なスタイルで、闊歩している。膝上20センチのミニスカスタイルの殿方を街中で見た日には、いつモンスーンが吹くのかと、胸騒ぎを起こさずにはいられない。

洗浄すること、きれいであること

私は潔癖症ではない。ある場所が多少散らかっていても、目を瞑ることは全く苦ではない。ただ、衛生環境が悪化していく様を黙認するほど、心苦しいことはない。
 
念のため確認するが、カンボジアの食器は、バナナやココナッツの葉ではない。我々が使うような、れっきとした食器を用いる。

想像してほしい。さあランチだぜと、コップに入れられたお湯に付け置きされているスプーンとフォークを取り出す。途端、スプーンのごはんつぶと対峙する。そして少しでも店内を散策してしまうと、そこにはワンダーランドが広がる。これは数ヶ月水を換えていない金魚鉢かしら、と思わざるを得ない水瓶から水を汲み、食器たちをきれいに洗う。

この状況に初めて直面した時を、今でも鮮明に覚えている。何故トヨタ生産方式がここまで世界で価値を見出される所以が、少しだけ分かった(気がする)。

“Yes”と“No”

灰色の返答を好む、我々をも凌駕する人々が、ここにはいた。
 

「これ明後日までにできる?」

「このタイムラインで問題ないよね…?」

「例の件、予定通り進められているか…な…?」
 

どうやら、この国には「YES」と「はい」しか存在していないようだ(と気付いた時には、私の肩には多大なる仕事が降り掛かっていた)。
 

冷静なの? 情熱持ってんの? どっちなの? と問い質したくなる国・カンボジア。竹野内豊的カンボジアにご興味を持たれた方、是非カンボジアへお越しいただけると幸いである。

街角のクリエイティブ ロゴ


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP